web小説の性質と、書籍化のメリット・デメリットを考える!

「web」小説なんだから紙の本とは楽しみ方が違う! でもまぁ、書籍化にも長所があって……

というわけで、今回は「web小説の特徴と楽しみ方」そして「書籍化のメリット・デメリット」を考えてみます。

結論から言うとweb小説はwebで読み書きすることを前提にしてるので書籍化は失敗して当たり前。しかし、より幅広い層に宣伝できるのは大きなメリット。

web小説論と言うと「なろうは異世界転生ばっかりだ!」みたいな、小説としての内容を論じる意見を多く見ます。しかし、より重要なのはwebと紙の違いによる性質の差だと思うんですよね。

そもそもweb小説と書籍の楽しみ方は違うのでは

で、まず私が強く強く言いたいのは「web小説と紙の本は別ものじゃね?」ってこと。web小説は「web」の小説なんですよ。web上で読むことを前提に書かれているので、紙の本としては合ってないじゃないかと。

似ているようで別のもの。「web小説として人気なのか! だったら紙の小説としても売れるだろ!」ってのは、「豚骨チャーシューラーメンが人気なのか! だったら豚骨チャーシューうどんも売れるだろ!」みたいな状況なのでは?

豚骨チャーシューはラーメンだからウマいのであって、うどんとしては微妙だと思いませんか(笑) うどんとラーメンは同じ麺類で似ているけども色々と違いがある。

ここからはweb小説ならではの性質、紙の本との違いを書いてみます。

更新ペースが速い

web小説って割と更新が速いですよね。最速だと毎日更新、そこまで行かなくても週1更新ぐらいは割と普通。

これが楽しいポイントじゃないかと。まさに物語が進んでいく状況を見ることができる、それが面白い。更新される日になるとワクワクドキドキ。

比べて紙の本ってのは更新ペースが遅い。発売が3か月に1回とか、年に1回とかだったりするわけで。リアルタイムで最新話を追いかけていく、という感覚にはなりません。出来上がったものを受け取る。

web小説を書籍にしてしまうと、この「更新ペースが速い」「最新話を追いかけていく」という面白さが無くなってしまうわけです。

ある意味で、web小説は連載中こそが面白いと言えるのでは。完結した後よりも、リアルタイムに更新されていく連載中にこそ本質がある。

紙の本はまとまった話が完結した後に発売されるもの。楽しみ方が違う気がします。

作者に感想を伝えられる

web小説投稿サイトには感想欄があり、さらに作者さまによっては返信もしてくれる。これもwebだからこその気がします。

紙の本を読んだときに、いちいち作者に感想文なんて送りませんよね。送ったとしても作者が読んでくれているかどうか分からないし、返事なんて返ってくるはずもない。

しかし、web小説だと作者と気軽に交流できる。この距離の近さもwebだからこその楽しみでは。これも紙の書籍には無い性質。

つまり、web小説の面白さはリアルタイム性

速いペースで更新されていくの追いかけていくのが楽しい。作者さまと高速でコミュニケーションできるのが面白い。

つまり、web小説の面白さはリアルタイム性なのではないか。web小説は動であり、紙の本は静。

webを前提にした構成であり紙の本には合わない

構成が自由である

紙の本として作られる小説はそれを前提にした構成になっています。1冊の中で起承転結が必要になる。比べて、web小説にはこの制約はなし。作者の自由に書くことができ、いわゆる序盤に本1冊分を丸々使ってもいい。「異修羅」という作品なんかは前振りと言えるキャラ紹介パートだけで15万字ありますし。

また、web小説は大長編になっても別にいい。10万文字も100万文字も何も変わらない。比べて、紙の本は長くなればなるほど値段が上がり物理的な重さも増えてしまう。財布的にも本棚的にもマズい。長すぎるのは嫌われる。

webの大長編は、webだからこそ無問題。紙の本には合ってないんですよ。

1話ごとに独立性が高い方が良い

web小説って、基本的には更新された最新話を読みに行きますよね。となると、1話ごとに独立性が高い方が良い。

第100話が投稿されたとします。でも、第90話からの完全なる続き物だったら、この第100話の内容を理解するためには第90話から読み直す必要が出てきますよね? 第100話だけじゃ理解できない。

こういうのは面倒なんですよ。いちいち読み直しなんて時間かかります。第100話が投稿されたなら、その第100話だけで楽しめた方が気軽に読める。話ごとに1話完結に近いスタイルが歓迎される。4コマ漫画みたいなイメージでしょうか。

最初から通して読んでみると細切れすぎたり話のつながりが悪かったりする作品も多いけど、そういう読み方は重要視されていない気がします。更新されるたびに最新話を1話読む、これがweb小説の基本的な楽しみ方なのでは?

対して、紙の本は最初から最後まで通して読み進めることが前提。だから、しっかりとしたつながりがあるべき。

webから書籍化された作品を読んでも面白くなかった! なんて意見も見ますが、それも当然。web小説の1話完結ぶつ切りスタイルはweb用、紙の本で読むとテンポが悪い。

紙の本は映画、web小説はyoutube

このようにweb小説と紙の本は構造上の違いも多い。そもそも「書籍化」なんて簡単にできるもんじゃない。

個人的には「紙の本は映画」「web小説はyoutube」だと思っています。紙の本は、映画のように完成したものを長時間かけて最初から最後まで一気に読む。それが面白い。

逆にweb小説は、youtube動画のように1日5分ぐらいを毎日少しづつ楽しむ。

youtuberのヒカキンさんの動画だって、あのノリで2時間ぶっ通しの「ヒカキン:the movie!」とか作って面白くなさそうでしょ? あれは5分10分の動画だからこそ良い。同じことです。

書籍化という方法のデメリット

打ち切りは大迷惑

書籍化されたらゴール! ハッピーエンド! ……とは限らないのはみなさん御存じでしょう。

おもな問題は途中での打ち切り。長い作品の場合、売れなくなってくると最後まで書籍化せずに企画が終わってしまう。

まぁ、出版社はボランティアじゃなくて営利組織。そして長い作品だと完結まで20巻以上かかったり。売れない商品を作り続けるのは無駄なのは分かる。でも、色々と迷惑な話。

1番大きいのは、書籍からのご新規さんに中途半端な商品を売り付けることになり信頼がなくなる、という点では。

事情が分かってるweb版のファンはweb版を追いかけ続ければいいけれど、何も知らずに本だけ買った人は「あれ? 続き出ないな……2巻までとかふざけんなよ。」ってなる。こういう被害者、私の周りにも1人いましたからね。

書籍化ラインを超えないと価値ゼロ? そんなはずない!

書籍化は作者に正当な対価を払う方法として無視できない欠点が。それは書籍化されないと1円の収入にもならない、ということ。0か1か、大ざっぱで雑すぎる。

ここに5つの作品があるとします。

ここで書籍化される人気ラインが価値1000だとしましょう。すると、それ未満の作品にはまったく対価が支払われないことになってしまう!

これはおかしいですよね。700の作品にも700の価値分あるんだから。ちゃんと収入になるべき。

書籍化ではある程度の人気が無いと全く収入にならない。比べて直接支援では、熱心なファンがたとえ1人でもいればいい。より柔軟かつ自由に対価を受け取れる。こちらの方が圧倒的に適切な評価でしょう。

web上のまま作者に金銭を渡せるシステムが必要

・web小説はwebで楽しむことを前提にしている。紙の本とは構造が違う

・書籍化ラインまで行ってない作品にも価値はある

これらに加えて

・読者が評価して金を渡したいのは作者であって、出版社や印刷所などではない。

この3点から言えるのは、(読者は今と同じく無料で自由に読めて)web連載のまま収入が生まれるシステムが必要だってこと。

大手出版社の場合、印税(=著作権者に支払う著作権使用料)は通例で消費税を除いた書籍価格の10%とのこと。逆に残りの90%は作者さま以外のところに行く! これはちょっと非効率でしょう。

web上のまま収入になる、別に特異な発想でも大して難しいことでもないはず。youtubeの動画だって、広告を載せることで動画のまま投稿者に収入が生まれますし。youtubrはDVDなんて売ってねぇ! という話。

実現できそうな方法としては大きく分けて2種類でしょうか。pixivFANBOXのような月額支援タイプか、小説サイト「マグネット!」が実装しているようなタイミングと金額が自由な投げ銭型か。そもそも読むのを有料にする道もありますが、これはちょっと読者が減りそうです。

収入になれば作者のやる気アップにつながり、より良い作品が多く投稿され、それによって読者も増え、サイト運営会社にも利益が!

web小説サイトは、出版業界と距離を置くべき

この記事で主張する作者への直接金銭システムを実装すると、書籍版の売り上げが落ちると予想できます。

・読者としては「あれ、すでにサイト内で金銭支援してるじゃん? 書籍版を買わなくても作者は大して困らんよね? 2重払いみたいなもんだし、あんま買う気にならんな」

・作者としては「もう収益化できてるし、書籍化にこだわらなくてもいいかな。書籍化の作業でweb版の更新が止まると固定ファンに迷惑だろうし……」

よって、作者への直接金銭を実装しようとすると出版社から反対を受けるでしょう。しかし、そうなったらサクッと距離を置くべき。

小説家になろうを代表とするweb小説サイト。今までは何となく「小説・出版業界の一部」だと思われてる気が。講談社・小学館などど同じグループ。

しかし、個人的にはwebサービスの1種だと思ってます。なろうは、youtube・twitter・pixivなどの仲間だろうと。娯楽系の基本無料webサービスの一種。

だからwebサービスとしてより独立した形で、出版業界に依存せず、運営していくべきでは。

ここしばらく出版業界は不況で下り坂、webサービス会社は成長中。なろうなどのweb小説サイトの運営会社はどちらのグループに属するのかはよく考えないと。

 

ちなみに、カクヨムは作者への直接金銭システムは不可能っぽいんですよねぇ。出版社であるカドカワの系列なんで。

書籍にすると投稿サイトの外にも宣伝できる

しかし、書籍化には独自のメリットがあるのも事実。それは「小説投稿サイトを使っていない人にも作品を売れる」こと。

web小説の読者と、小説の購買客を図にすると↓のようになります。

A、web小説サイトのユーザー。ただし本を買う気はない。無料読者

B、web小説サイトを使っているし、小説も買う。ファン型読者

C、web小説サイトは使っていないが普通に小説は読む。一般読者、非オタ。

月額支援・投げ銭システムの場合、金を払ってくれるのはB(=サイトの内のファン型読者)だけなんですよ。作品を知る機会がサイトの内部にしかありませんからね。投稿サイトを使っているユーザーの一部からのみ金銭を受け取れる。

対して、書籍化するとCの部分(=web小説サイトを使ってないけど面白い小説には金を払ってくれる人々)まで作品が広がる。webサイトの外にも作品が発信される。

サイト内の月額支援・投げ銭システムだと、サイト内で完結できるのがメリットだし、サイト内で完結してしまうのがデメリット。効率的だけど広がらない。

つまり贅沢を言えば「サイト内での金銭支援システム+サイト外に向けての書籍化販売」の2パターンの同時収益化が理想。

手に取れる実物になるのも嬉しい

また、より単純な話としてさわれる実物になると嬉しいってメリットも無視はできません。今までは電子データでありネットの中にしかなかった物語が、紙の本としてリアル空間に! ロマンです。作者さまの中には収益の大小より、こちらを意識している人も多いかも?

まとめ

・web小説は連載中の更新を追いかけていくのが楽しい。紙の本は完成したものを受け取る。

・web小説は話ごとの独立性が高い方が読みやすい。よって、書籍にするとぶつ切り感が出る。

・つまりweb小説はwebで楽しむべきであり、紙の本にしないと作者の収入にならないのはおかしい。

・ただし、書籍化するとサイト外にまで作品を宣伝できるというメリットもある。

 

いかがだったでしょうか。「web」小説と、紙の小説は楽しみ方が違う。これは読者・作者・運営会社・出版社などなど関係者すべてが意識すべきポイントだと思うんですよね。

 

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