小説家になろう、おすすめ完結作品ベスト10! (2018年10月版)

完結してるから安心して読める! 書籍化済みの大人気タイトルから、隠れた名作まで紹介。

500作以上を読んできたweb小説大好き人間である私「イマ猫」が、自信をもって超おすすめできる作品のみを選びました!

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目次(青文字をクリックでジャンプ)
異世界ファンタジー(バトル中心)
 死神を食べた少女
 霧の塔、白銀の杭
異世界ファンタジー
 園丁の王
異世界転移
 イカれた小鳥と壊れた世界
現代ファンタジー
 魔族史
恋愛
 恋をしたら死ぬとか、つらたんです
 北欧貴族と猛禽妻の雪国狩り暮らし
SF系
 あなたの未来を許さない
現代ドラマ
 サムヒア・ノーヒア
 光あふれて死ねばいいのに

異世界ファンタジー(バトル中心)

死神を食べた少女 

335,278文字

戦乱で人々が苦しんでいた時代。お腹が減って死にかけていた少女の前に、大鎌を持った何かが現れる。その結果は……!?

強くて腹ペコな主人公「シュラ」が、国同士の戦争の中で深い考えもなしに大活躍していく物語。出世すれば美味しいものがたくさん食べられる! 不利な状況になっていく血みどろの戦争と、楽しそうなシュラさま御一行が面白い。

長すぎず読みやすい分量。小説家になろうでは古めの作品で、質のいい中編と言えばこれ、って感じ代表格。

ネタバレありの感想

ファンタジーと言っても魔法はほぼ出てこず、血みどろの接近戦。
シュラがとても良いキャラをしていて、敵には容赦がないが部下は大事に。約束は守り筋を通す、好感が持てるタイプの人間性。魔性のカリスマを持ち、

「手当たり次第に殺せ! 誰だろうと問答無用だ! 反乱軍は全員殺せっ!」

死神の号令の下、騎兵達の蹂躙が開始される。武器を持たない民間人は逃げ惑う。貧弱な装備の民兵は抵抗するが、馬上から繰り出される槍に突き刺され、死んだ。
シェラは雑草を刈り取るかのように、敵陣で殺戮を行った。大鎌を左右、水車の如く回転させながら、手当たり次第に四肢を引き裂いていく。勢いは止まらず、陣中程まで一気に雪崩れ込んだ。

シュラの魔性のカリスマと、それに魅入られたシュラ隊の不気味な描写もすばらしいですねぇ。読んでてゾクゾクしてきます。
シュラは決して分かりやすい「ヒーロー」ではなく、人間の一線を踏み越えてしまった化け物である。そしてシュラ隊も外から見ると理解できない恐怖の軍勢と化している。

大鎌を肩に担ぐと、先頭を駆け始めるシェラ。その後を、無言で白いカラスたちが追い始める。槍を斜めに掲げ行進を始める。恐怖の感情がなくなったのだろうか。騎兵達の目から光が消えている。ただ、上官であるシェラの指示に従うだけ。不安の声を漏らすこともない。規則正しく、馬を前へと進めていく。前方の闇を見据えて。

敗残の騎兵達はその全てがシェラ隊から引き抜かれた者達であり、まるで死神に魅入られたかのように、シェラの野営地に一直線に落ち延びてきた。
ヴァンダーは絶句し、背筋を凍らせていた。そんな馬鹿なことはありえないと。敗残の兵が、どうやってこの場所を知る事ができるというのか。常識ではどうやっても考えられない。場所など知らせていないし、篝火など焚く訳がない。目立たないようにジッと息を潜めているのだ。何故? どうして? 疑念に包まれる。
――そして、一番恐ろしいのは、誰一人としてそれを疑っていない事だ。

いわゆる普通の戦記物とは一味違った空気です。主人公たちも正義の味方とは全く言えそうにない(笑)

そして、本作のもう1つの魅力が深みのあるストーリー展開。主人公たちが戦いに参戦し不利な状況を大逆転! 敵の軍勢をぶっ倒す! ……みたいなテンプレ展開とは全く違う。

個人としては最強でシュラは大暴れしますが、基本的に負け戦のままで物語は進行していくんですよ。普通、主人公は勝ち続けるものだけど本作だとそうはいかない。これがすごく好み。
敵である解放軍の指揮官の方が有能で、準備も周到。そもそも反乱は王国が民を圧制しすぎ結果、大義名分と国民の支持は解放軍の方にある!
なろうのスタンダードなら、主人公シュラは解放軍側に参加しているはず。しかし、本作では崩れ行く王国側の兵として戦い続ける。

はたして、その結果は? 解放軍は本当に正義の軍隊なのか……? と思ってたら、やっぱりそうなわけがないという(笑)
重苦しく厚みのある展開。すばらしい。作者さまの感性にめちゃめちゃ共感します。こういう話が読みたかった! 特に、第30話と最終話は締めにふさわしく何度見てもいい。

脇を固めるキャラたちも良い味出してます。みんな大好きヤルダー閣下。個人的にはディーナーさんも好き。
バトルものとしての戦闘描写、軍記ものとしてのストーリー展開、それぞれのキャラクター描写。圧倒的な完成度でしょう。

 

霧の塔、白銀の杭 

109,762文字

空から落ちてきた少女は吸血鬼だった!? そして、それを見つけた少年は機械の体! 吸血鬼×スチームパンク。

ひねりの効いた世界観がとても良い雰囲気を作っている。化け物は金属を嫌う、という設定はすごい好き。ストーリーも王道的なボーイ・ミーツ・ガールだとは言えるが、ダラダラした無駄な部分がなく戦闘シーンは熱い。

総合的な完成度がすばらしく高い良作。文章量としても本1冊分で読みやすいし、とてもおすすめ。

ネタバレありの感想
どんな作品でも最初の部分は重要。冒頭で読者をつかめるか? 序盤で物語に引き込めるか? つまらないと判断したら消費者はすぐに逃げてしまうもの。

その点、この作品にはプロローグからグググっと引き込まれました。ちょっと引用してみると、

 暗く深い地の底に、その城はあった。
幾歳を経てなお朽ちることを知らぬ、最古の王の住まう城。
不滅の異形たちが住まう城。

その城の一室に、ひとりの少女がいた。

(中略)

その日、少女は朝から期待に胸を弾ませていた。
仄暗い地下都市から憧れの地上に出られる日が遂に来たからだ。
彼女がずっと、ずっと待ち望んでいた日だった。

という風に、物語は地下から始まるわけですよ。どうでしょう? なかなかに珍しく新鮮味のある開幕だと思いませんか。「この少女は何者か?」続きが気になって、作者さまの誘導に載ってしまう。

また、2話で最初の戦いが起きるけど、ここでも世界観の工夫によって魅力が増している。再び引用すると、

フリークスは概して金属を弱点とする。

(中略)

途端に、街を囲む防壁が次々に甲高い音を立てて蒸気を噴き出し、傘のように装甲板を展開させる。
露出したその内部では歯車が勢いよく回転し、次の瞬間、胞子のように金属粉を撒き散らした。

吸血鬼には銀が効く、から着想を得たのでしょうが「フリークス(化け物)は金属を嫌う」という設定は良いですねぇ。いわゆるテンプレ的なゲームファンタジーとは大きく差別化できている。

やはり、何かしら「その作品ならではのルール」があると個性が出ます。キャラやストーリー展開だけで独自性を出すのは中々に難しいのでは。
そして金属粉末をまき散らす防衛設備! とても絵になる。漫画・アニメなどでも見てみたくなるシーン。ここまで読んで「この作品は当たりだ!」と確信しました。
世界観に工夫があると第一印象がグッと良くなりますねぇ。

あとは吸血鬼に必要なのは血じゃなくて実は「赤いもの」でありバラの花も補給になったり、吸血鬼は成長しないし忘れない、といった設定も好き。

設定にひねりが効いているのに対して、展開としては王道のボーイ・ミーツー・ガール。少年「エミス」と少女「クラウ」の出会いと成長の物語。
2人とも悩みがあり自分の居場所を探している。交流しているうちに魅かれるようになり、敵に襲われる中で自分の気持ちを知り、覚悟を決め、パートナーとして生きていくことに未来を見出す。

正統派のストーリーこそ作者さまの力量が問われると言えるでしょう。そして、この作品は上手いです。テンポよく違和感がなく終盤は熱く盛り上がる。
過去に縛られていたエミスが師匠の気持ちを理解し前向きになっていくのは、テンプレと言えばそうだけど胸を打たれますね~。
感想欄で師匠が「故人ヒロイン」扱いされてるのは笑っちゃいますけど! 確かに、見方によっては割と「過去の女が忘れられない男」感あるエミス君(笑)

あとは敵キャラもちゃんとしてるのも良い。この作品の悪役としては騎士位「ズェザ」さんと、黒鋼の王「サダク」さん。そして2人とも強く誇りがあり立派。
ズェザさんも言葉使いはチンピラ系っぽいけど、普通にエミス君を戦士として認めてるし。
サダクさんも、なんだかんだ父親としての情と期待はあるっぽいし。悪役が主人公の踏み台扱いじゃなく、ちゃんと1人のキャラとして描かれている作品はいいですよね。

それにしてもズェザさんはサダクさんになめた口をきいてるけどいいのかなぁ(笑) いくら血族が違うとはいえ騎士位が王に古臭いとか言って許されるとは……意外と吸血鬼の世界は縛りがゆるくてフレンドリーな社会だったり?

※追記 作者さまから返事をいただきました。

吸血鬼は成長しないので転化した時点で品性も確定します。
短期記憶レベルでは繕うこともできますが、根本的にチンピラはチンピラのままです。

とのこと。な~るほどぉ。つまりズェザさんは永遠にチンピラであり、サダクさんの方も「敬語がなってないけど、指摘しても無駄だしな~」と諦めでスルーしてると……これはこれで吸血鬼の社会も面白そう。

世界観90点、ストーリー85点、キャラクター70点、総合評価だと100点中82点ぐらいでしょうか。
いわゆるライトノベル的な個性爆発で記憶に残るキャラクターは出てこないので、そこはちょっと薄い? しかし完成度はとても高いと思います。
教科書というか優等生というか、物語に求められていることをきっちり押さえている。世界観で引き込みストーリーで魅せる。

特に、自分でライトノベルを書こうと思っている人はぜひ読んでおくべきじゃないかと。私も昔に少しだけラノベを書いてましたが、作者さまの上手さは尊敬しますねぇ。
どんな小説を書くべきか、どんな小説を「書けるようになるべきか」。お手本になる作品って感じ。

異世界ファンタジー

園丁の王 

109,344文字

傭兵「オルソ」は、戦いに疲れ平和な稼業に就くべく母国へ舞い戻った。庭師になることを希望し役所の窓口へ並んだところ、手違いが重なり天才造園家「グラーブ・ヴァンブラ」の元へ弟子入りすることに。グラーブは無表情で暗い男、辛い過去があるらしい。さらに、ただの庭師ではなく……?

中世~近世ファンタジーだけど、魔法的なものより人間関係がメイン。登場キャラは少ないんだけど、その分だけ主要キャラにとても厚みがあります。

空気感がものすごく好み。戦いも冒険も恋愛もない。良いことだけじゃなく辛いことも起きる。派手で分かりやすいストーリーがあるわけじゃない。しかし、なんというか「人生」が感じられる作品。

ネタバレありの感想

私ごときの文章力では紹介しづらい作品ではあるんですが……まず、作者である「井出有紀」さまのセンスと個性が光るポイントが造園を題材にしたところ。
造園とは、文字通り庭を作ること。西洋の幾何学的で豪華な庭園の数々はみなさん知っているはず。計算された配置、刈り込まれた草花、噴水や彫像……
あれって巨大な芸術作品みたいなものでロマンですよね。そのくせ、意外と造園をメインの題材に書かれた作品って少ない印象。珍しい題材が出てくると読者としても新鮮な気持ちで読み進めていくことができます。

また、ファンタジーと言っても本作にはモンスターとか派手な魔法は出てきません。代わりに登場するのは、敷き物の中にある不思議な異空間。

彼の上空は暁だが、右手は真昼の明るさで爽快に晴れ上がっている。その前方では雲の合間から稲妻が落ちており、左手は夜、その隣が夕暮れといった具合である。目まぐるしく広がっている空からは、しかし不思議なことに混沌よりも自由な秩序を感じさせた。
地上は大小の庭園だらけである。

想像するとなんとも美しく楽しい! 非現実的な風景こそ、ファンタジーの本領でしょう。

そして、「庭は製作者の心を反映している」という設定で、庭の描写を通してキャラクターを描くのことに繋げているのが上手い。
いやまぁ、物を見れば作った人が分かる、ってのは現実でも当たり前のことなんだけど、そこをしっかりキャラの掘り下げに使っているのが自然で良い感じ。

主人公は元傭兵の「オルソ・マイラーノ」だけども、この作品は実質的に天才造園家である「グラーブ・ヴァンブラ」の物語だと言える。話のほぼすべてはこの1人の男を書くために使われています。
このグラーブさんが実に存在感があり良い味をしている。1-1からグラーブさんについての描写を一部省略しつつ引用すると

年齢は三十八、肉薄な相貌は青白く、後ろへ撫でつけられた短い髪は黒く、同じ色の瞳には全く光がなく、いくたりとも生気が感じられない
中背の痩躯は、常に黒か、限りなく黒に近い暗い色の衣装をまとっている。右の袖が空虚に垂れ下がっているのは、事故により右肘から先を失ったためだという。

華々しい庭園とは真逆。無表情で、口数も少なく話し方もそっけない。他のキャラクターとは明らかに異質であり、第1印象からググっと読者の興味を引いてくる。作者さまの力量でしょう。

そして、話が進むにつれて彼が常に悩み苦しんでいることが明らかになってくるんだけども……その様子がすごく共感できるというか現実味があるというか。

例えば、娘として扱っていたプルシナが亡くなった後の言葉。

「君の目から見て、私はプルシナへ愛情を注いでいたかね」

はたして自分はちゃんと娘を愛せていたのか? 都合のいい存在として利用していただけじゃないのか? 彼は、そういう疑問を持ってしまうわけで。

そうやって悩むこと自体が愛していた証拠だろうと思いますが、愛ゆえに悩まずにはいられない。そこに作者さまの人間心理の高い描写力があるし、そこまで悩んでしまうグラーブさんに魅力を感じる。

というか、プルシナが跳ね飛ばされるシーンは読んでて「!?」ってなりましたよ。まさかプルシナちゃんが……前振りが無い突然の事故。リアリティというか、作中のキャラたちと一緒に読者も驚いてしまう。悲しみが印象に残ります。

また、もう少しグラーブさんの過去と直接的に関わるところでは、箱庭の親方から

心の穴を埋めることはできない。確かに庭は製作者の心を映しているが、だからと言って庭を作り変えても心は作り変えれない

的なことを伝えられる場面が。

しかし、この親方はクラーブさんの心の一部であり、自分でも分かってたこと。
彼自身も

「思っていただけだ。潜在意識で無意味と知りながら、私はずっと無駄な作業を続けてきたのかと。しかし、他に何ができた? 残された時間は少ない。今さら何を始めろと?」

と独白している。

そうなんですよ、賢いグラープさんが気づいてないはずがない。でも「しかし、他に何ができた? 残された時間は少ない。今さら何を始めろと?」と先に進めないでいる。
無意味と分かっていながら、それに頼ってしまう。他の選択肢が見つけられない。私も共感しちゃいますねぇ。

けっきょくクラーブさんは最後まで悩みと後悔から抜けだせないまま逝くことに。とても心打たれる展開。1人の男の失敗と苦悩の半生、10年以上ひたすらに過去を見つめる日々、何か心の穴を埋めようと必死だった生活……重く悲しいけれど、それがいい。深みのあるキャラクターです。

まぁ死後の魂は救済されたことが後になって分かるので、読者としては安心できるんだけども。この描写がないと読後感が辛くなりそう。

もちろん、この作品はクラーブさんだけではなく、主人公であるオルソさんの方も良い味してます。奥さんをちゃんと見ずに逃げられちゃう展開、私は好きですね。かわいそうだけど男の失敗としてはありがちで笑ってしまいます。

そして娘であるパッセラちゃんに

「それに、あたしがついてったら、おとうさん一人になっちゃうよ」

と言われて、ようやく家族・家庭の存在を実感する。ここまでは結婚してみたものの結局は流れ者の気分だったじゃないかと思ってみたり。
最終章を読むに、なんだかんだ良い父娘関係を築いていけそうでよかったよかった。

10万文字=だいたい本1冊ぐらいの分量で、まったくダラダラした展開がない。読み終わってみると、クラーブさんもオルソさんもそれぞれの人生を歩んでるなぁ、としみじみする。なんとも読後感が深い作品です。爽やかな気分になるわけでもないんだけど……妙に満足しちゃいますね。

異世界転移転生

イカれた小鳥と壊れた世界 

453,209文字

ある日突然ファンタジー系異世界に召喚された鳥取県在住女子高生、鳥飼小鳥。若干天然キグルの少女が送るへんてこテンション異世界日常物語。

混沌とした世界観に、バリバリ個性的なキャラクターたち。あふれでるパロディネタに、加速していくカオス。一応は異世界ファンタジーなんだろうけど、一般的な作品とはまったくストーリー展開と読後感が違います。ギャグコメディ。しかし、戦闘シーンは無駄に緊張感がありかっこいい。

ギャグが、ぶれない。最初から最後まで面白い。お気に入りのキャラはイカレさん。根は優しいがド畜生な部分も多くて笑う。

現代ファンタジー

魔族史 

58,841文字

人類と魔族、2つの知的生命体が進化した地球。人類はアフリカ・ユーラシア大陸、魔族は南北アメリカ大陸で発展。魔族文明の変化と近代以降の世界大戦を解説。

本格的な創作歴史。魔族の文化にとてもリアリティがある。700万前の人類と魔族の生物学的な分化から始まる大スケールで厚みのあるファンタジー。

ネタバレありの感想

魔族の生態と文化にとてもリアリティがある。こういう作風すごい好き。

魔族は白い髪と肌、赤い目を持つ。血は赤く、寿命は人族と同じ。顔立ちも人類のものとよく似ているため、ちょっとした変装をすれば容易に成りすます事ができる。そのせいか魔族は人族の近縁種だと勘違いされがちである。しかし、遺伝子的には人族とチンパンジーほどの差がある。人族とチンパンジーが子供を作れないのと同様に、人族と魔族も子供を作れない。

火や金属の代わりに魔族の文明・文化を支えた物こそが「球体」である。魔族の学名がマレフィカ・オービス(球体魔法使い)と名付けられたほど、球体は魔族を体現したモノだ。
魔族の歴史は球体の歴史である。魔族はテレパシー以外の魔法は球体が無ければ使う事ができない。人族がより高温の火、より硬く軽い金属を求めたように、魔族はより完璧な球体、より巨大な球体、より透明な球体を求めてきた。それがより強力で便利な魔法の、ひいては文明の基礎となったからである。
木や石を削って球体を作った木石時代から始まり、水晶時代、ガラス時代、アクリル時代と続く魔族の時代区分は、その時代に普及していた球体の材料に由来している。人族にも石器時代や青銅器時代という区分がある。それと同じだ。

「人類は猿から進化した」というフレーズは誰もが聞き覚えがあるだろう。これは魔族にも当てはまる。700万年前まで、人族と魔族は全く同一の種だったと言われている。両種族の祖先の化石の年代を遡っていくと、両者の違いは次第に少なくなっていき、700万年前の化石で同じ物に収束する。サヘラントロプス・チャデンシスである。

球体を使って魔法を使う、というファンタジー的にも面白い設定。そこから球体の材料によって時代を区分するという考古学的な発想……ものすごく良いですね! 各時代の魔法文明の風景を想像すると、何ともステキ。
さらには700万年前の生物学的な進化から扱うってんだから、この手の創作歴史の中でも本格的で厚みがある。生態と文化を内包した種族全体の進化。魔族文明史ではなく、まさに「魔族史」と呼ぶににふさわしい内容でしょう。
センスある設定と細かく深い描写。高品質なファンタジー作品です。

恋愛

恋をしたら死ぬとか、つらたんです 

370,900文字

自称『普通の女の子』であるクレイジーサイコビッチ・藤井ヒナが、VR乙女ゲーの試遊モニターをする話。

ただし、恋すると死ぬ。死んで初めからやり直し。そしてクリアするまでログアウト不可。超恋愛体質なヒナさんが恋しまくって死にまくるギャグストーリー。

すさまじいギャグセンスで面白すぎる……!ぶっ飛んだ設定と、ヒナさんの濃いキャラが癖になる。

ネタバレありの感想

最初から最後までキレッキレで爆笑しっぱなし。
話の中心になっている「恋すると死ぬ」「葬式シーンのある乙女ゲー」というアイディアが天才。色々な、そして普通なら大したことのないシーンでキュン死しまくり、そして残された男キャラが混乱しまくるのが笑えてしょうがない。

「だめだろ、お前方向音痴なんだからさー。
転校初日なんだから、一緒に行こうぜって誘っただろ。
ったく、あんまり俺に世話かけんなよー?」

 

口では厳しいことを言いながら、彼は優しげな笑みを浮かべている。
だが、ヒナはその笑顔を見ることはなかった。

 

その場に崩れ落ち、死んでたからだ。

 

冷たくなった幼なじみはもうなにも語らない。ただの屍だ。
彼女との未来を夢見ていたはずなのに。それは全て壊れてしまった。

不用意に声をかけてしまったばかりに――

 

「え、おい、ヒナ? ヒナ、おい、どうしたんだヒナ、
嘘だろヒナ! ヒナ! ヒナーーーーー!!!」

 

三島優斗の悲痛な絶叫が、学門前にこだましたのであった。

乙女ゲーのはずなのに壮絶すぎる(笑) 攻略対象というより被害者って感じで、読んでると男キャラに同情しちゃいますわ。

そして、主人公のヒナさんも作者からクレイジーサイコビッチと呼ばれるまであってすさまじいキャラの濃さ。
男性だけでなく女性も恋愛対象、というか意識を持ってるなら無生物でもOK! というか惚れやすいってレベルじゃねぇ!

「中学三年間では、誰ともつき合わなかった、かな」
「ほらー、もー。
変な雑誌とかで聞きかじった知識はやめてよね。
あたし、そんなに軽くないし」
「うん、ごめんね。
でもわたし、小学生二年生までに、400人ぐらいとつき合ったよ」
「え?」

ぽかん、と。
凛子は口を開けていた。

「わたしもひとりひとり本気だったよ。
期間は短かった……かもしれないけど」

その彼女に気づかず、語るヒナ。

「みんなと真剣に結婚したかったけど、でも子供だったからダメだったんだ。
法律とか条例もあったし。
当時は押さえがきかなかったから、二股が悪いことだとわからなくて、
最高三十股ぐらいして、分単位でデートの約束とかしていたんだよね」
「……8才で?」
「バレンタインデーはすっごく大変だったなあ。
貯めてたお年玉も全部使って、チョコレート500個ぐらい作っちゃったんだ」
「……業者?」
「ううん、ただの小学生だったけど……」

ええ……(ドン引き) こいつはタダのビッチじゃねぇ! クレイジーなサイコ野郎だぁ!
そして、恋愛に役立つかも! という動機でありとあらゆる技能を習得し、特殊部隊ネイビーシールズすらも余裕で撃退できる超絶の戦闘能力を持つ!
ハイテンションな怒涛のギャグ、濃すぎるヒナさんのキャラ。全編センスのかたまり! 読めば分かります!

 

北欧貴族と猛禽妻の雪国狩り暮らし 

527,618文字

陽気な名ばかり貴族「リツハルド」と元軍人の年上妻「ジークリンデ」の雪国暮らし。寒さの中での狩り、仕留めた獲物の解体作業、暖炉の火で料理、手作業の商品作り……毎日の生活は穏やかに過ぎていく。ほのぼの恋愛物語。

一応、異世界らしいけど魔法は出てこず、かな~り現実的で堅実な生活が展開されます。トナカイは宝物。銃が出てくるので時代的には近代? 丁寧に描かれる村の暮らしは強いリアリティが感じられますね。

個人的には文章中に時々出てくる「!」「!?」が地味に癖になる(笑) 読んでもらえば分かりますけど、その時のキャラの表情を想像するとニヤニヤしてしまう。軽く読めてラブラブ系の恋愛web小説なら、まずはこれをおすすめしたいところ。

ネタバレありの感想

2人の仲良しっぷりがたまらない。そして、出てくる料理もおいしそう。読んでてものすご~く癒されまくる作品。

昼食もかなりの量が用意されている。
潰したジャガイモの上にあるのはウサギの香草煮込み。深型の木皿に装われているのは肉団子のベリーソース絡め。パンはいつもの黒麦パン。焼きたてだからか厚めに切り分けられていた。ふっくらこんがり焼きあがったキノコのスープパイは、サクサクな生地と濃厚なクリームと一緒に食べれば至福の時を迎えることが出来る。脂の乗った白身魚のチーズ焼きはふっくらとした身が口の中で蕩トロけている。

ジークはこの国の食事は自国のものより美味しいと絶賛してくれた。
我が家の食事は唯一の自慢だったので、認めてもらって思わず顔もにやけてしまう。

商人から買う食材は高い品ばかりではあるがなるべく良い物を購入し、美味しい食事を作って貰う為にお金を惜しまないようにしようと心に決めた瞬間である。

食事シーンがいっぱい出てきて、どの場面もおいしそうなんですよねぇ。

恋愛ものとして見ると、始めはギクシャクだけど、すぐにラブラブ。ベタ甘まったり。ハラハラドキドキする展開はないので恋愛ものに緊張感を求める人には少し合わないかも。

ジークはペンと交換日記を掴んで手元に寄せ、何かを熱心に書き始める。それはすぐに自分の目の前に差し出された。

交換日記にはこう書かれてある。

――好きな色は今度探してみる。それと、ここでの生活は、とても刺激的で至極愉快だ、と。

書かれてあった文章を読み、こわばりかけていた表情も緩んでしまう。

「これって、悪くないってこと?」
「交換日記の内容を答えたら意味が無いのだろう?」
「!」

そんな風に言いながらジークは悪戯っぽい笑みを浮かべる。

いきなりの不意打ちで見せられた微笑みに、うっかり心を鷲掴みされてしまった。

2人ともいい顔してそう……!
おいしそうなグルメものとしても、リアリティのある日常ものとしても、あま~い恋愛ものとしても高品質な作品です。

SF系

あなたの未来を許さない 

261,905文字

根暗な女子高生「御堂小夜子」。彼女はある晩、27世紀の未来人から大学授業の教材として【対戦者】に選ばれる。殺し合いのために特殊な力が与えられるはずであったが、なぜか能力無しになってしまい……

無能力の人間が、知恵と工夫で能力者たちを倒していく描写が見事。全体の筋としても展開が上手く迫力がある。引き分けという選択肢があるのがリアリティを増して良い感じ。

主人公の小夜子が重度の変態レズであり、また1度だけだが性的暴行シーンが出てくるのがやや読む人を選ぶかも。

また、イラストレーターと組んだ挿絵があるのも特徴。白黒でシンプルながらキャラの外見・雰囲気がよく分かってナイスな出来栄え。イラストは今後も追加予定とのことで、さらに完成度が上がっていくのはすごい……

ネタバレありの感想

まず、SFとしての論理に説得力とオリジナリティがある。この作品は、タイムマシンを持つ27世紀の未来人たちが企画したデスゲーム。教育運用学の試験として、人間を上手く操縦する方法の学習と極限状態に置かれた人間の観察を目的とする。ついでにテレビ局協賛のエンタメ番組もあるという外道っぷり。

「過去の人間を殺し合わせるとかタイムパラドックスが起きるんじゃないの?」という話になりますよね。
そこで本作ではコンピューターの計算によって、未来にまったく影響を与えたなかった人間を選んだ、という理論が説明されています。

生物としての血脈は勿論、関与した事柄が僕達の現代まで何も繋がっていないことが、歴史上の事実として明らかになっている。これは学校の天体量子コンピュータで手間をかけて検証し計算したものだから、間違いない。

歴史および時間の流れにおいて完全に無意味な存在。だから、干渉して改変しても問題ないという理屈。う~ん素晴らしい。

また「無意味な存在と言っても、殺し合わせるとか人権上どうなの?」という突っ込みもありますよね。
それに対する回答としては、社会貢献する可能性が0なら人権は与えられない、という説明。

いいかい、【人権】っていうのは、その人間の【将来的な可能性】を担保にした保護なんだ』

(中略)

『だから君達みたいな「存在する意味が無いことが確定している人間」には、【人権】は適用されないんだよ』

なるほどなぁ、一理あるって感じですよね。選ばれた方はたまったもんじゃないけど(笑)

こういった説得力のある独自の理屈がでてくる作品は良いものです。世界観に厚みが増しますよ。特にSFの要素がある作品は、説明・理論の説得力と面白さこそが見せ場だと思いますし。

主人公たる小夜子さんも魅力的。幼なじみの「恵梨香」が大好きすぎる変態レズ。しかし、この部分に隠れているんですが他の部分も割と好きな性格だったりします。

まず、彼女は自分自身を無価値だと思っていて、それゆえに未来人の説明を信用します。

『君は何者にもなれなかったし、何にも繋がらなかった』

この一言が。
小夜子が自分の心を縛り続けていた鎖に証明書を付ける、この言葉が。
何よりも、どんな説得よりも。
小夜子に、キョウカの話を信じさせる力を帯びていた。

私はここの流れ好きですね。周りにどれだけ否定されても、自分の可能性を信じ夢を諦めない。そういう主人公も多いですけど、そこまで自分を信じるのは大変なことでしょう。
「お前は無価値だ!」と言われて「そうだよね!」と同意していく方が私には共感できました。

さらに、小夜子の思考回路は割と大人。両親は離婚、母親に出ていかれ1人で自分を育てている父親に対して

最早、逃げた妻に対する意地だけで娘を育てているのかも知れない。

自分を裏切った女の顔に、年々似てくる娘を育てなければいけない、という父の苦痛を察すると、小夜子は時々申し訳ない気分になってくる。いっそのこと、愛人を作るなり、後妻でも貰って気持ちを切り替えてくれればいいのに、とも思うのだが、そんなに簡単に折り合いを付けられるものでもないらしい。

いや~、冷静な分析と優しい意見。自分を愛していないことを理解しつつも、父親に同情する。大人の態度じゃないですか。

他にも自分を虐めてくる女子グループについて

それに、自分自身は無価値な存在だと認めている小夜子であったが、姫子達がクズだとは思いつつも無価値とまでは思っていなかった。
憎まれっ子なんとやら、という奴だろうか。性格が悪い人間のほうが世渡り上手であることを、小夜子も知らない年齢ではない。
ああいう人間のほうが、世間では強いのだ。

自分よりも、自分を虐めてくるクズ共の方が社会的には価値があることを受け入れ認める。なんて大人!

う~ん、これだけ分析力があって冷静で優しい小夜子さんがなぜ社会的に無価値になってしまったのか……普通に立派だと思うのに。
まぁ、最後まで読めばそうじゃないっぽいことも分かりますけど。計画の一部だから、参加してもらわないと困ると。

さらに、ストーリーもすごい。1つの特殊能力が与えられるはずの対戦者たちの中で、小夜子だけがまさかの能力無し。ここが本作の面白いところであり上手い部分。

まず、作品の中心であるバトル描写。能力者に対して、能力のない常人が知恵と工夫で戦っていく。弱者が強者を倒す、まぁ割とスタンダードな路線では。
もちろん、この部分も高水準ではあります。小夜子のとっさの戦術と諦めない執念は緊張感と迫力満点。

しかし私が上手いと思ったの直接のバトル以外の部分。まず、小夜子は現代人同士で話し合って引き分けのまま企画を終わらせようと考える。平和的で現実的、たぶん私も同じ状況なら同じことを考えます。
そして対戦相手との会話に成功。自分の能力を聞かれても素直に答える。自分は能力無しです、と。それに対する相手の反応は? 「嘘つくなよ!」

そりゃそうですよね~(笑) 能力を隠してるようにしか思えない。この状況で本当に能力が無いなんて信じる方がおかしい。
能力無し、ゆえに相手から信用されない。平和な交渉ができない。殺し合うしかない。無能力だってことが平和な交渉を自然に禁止して殺し合いへと物語を誘導していくわけですよ。リアリティのある展開。小夜子に能力があれば、きっと話の流れは変わったでしょう。

また、能力無しになった原因は監督である未来人キョウカへの嫌がらせだったことが途中で発覚します。キョウカも虐めを受けていた、これを知って小夜子は彼女に親近感を持ちます。能力無しの原因を上手く物語に絡めている。

最後に、勝ち残ってしまった小夜子はタイムマシンで現代に来ていた監督者をキョウカと協力して皆殺しにしまう。勝手な理論でデスゲームに参加させやがった復讐ってわけですね。

しかし、そこは対戦フィールドではなく能力は使えない。普通なら復讐なんて不可能。でも、小夜子はもともと無能力で勝ち上がったきた。だからこそ能力なしでも復讐できる。他の誰かが生き残っても結局は未来人の言いなりになるだけ、対戦者たちの中で唯一小夜子だけが未来人たちを殺せる可能性があった。

読んでて「なるほどな~!」と感心しちゃいましたよ。ここにきて無能力が「弱さ」から「強さ」に変換されるカタルシス。調子に乗ってた未来人たちの見逃し。そしてキョウカに嫌がらせした虐めグループの自爆。上手い展開。

このようにバトル以外でも無能力であることが展開に活かされているわけで。無能力の弱さの側面だけを見るのではなく、それを多角的に利用。作者である「Syousa.」さまは上手いですねぇ。

あと話はズレますけど、本作「あなたの未来を許さない」では途中でタイトルが回収されます。タイトルが回収される物語は良作の確率大! これはみなさん経験している法則じゃないですかね?

この作品は挿絵も大きな魅力。作者さま本人ではなく「jimao」という方が描いているとのこと。愛を感じるイラストで本当に良い。

「小説家になろう」の作品を評価する時にイラスト、しかも作者以外のイラストレーター制作、を考慮するというのはやや邪道な気がしないでもない。
でも、コンテンツとしては文章だけよりイラストがあった方が良いに決まってます。すばらしい物語に、すばらしいイラスト。総合評価としては私の読んできたweb小説の中でもトップクラスの完成度です。

現代ドラマ

サムヒア・ノーヒア 

94,681文字

天より並外れた絵を描く才能を与えられた「上木田零子」。しかし、その代償としてなのか少女は苦しみと孤独に押しつぶされていた。幼馴染の「沖澄栄一郎」は、そんな彼女のそばに居続けるのだが……絵は描いた人間を救うのか?

絵を題材に、生きにくさ・人生論を書く。何かしらの苦しみを抱えながら創作活動をしている人には刺さる内容じゃないかと。少なくとも私の場合は共感と反発で精神がやばい(笑)

非常に文章力があり、それぞれの作品や描いている時の心理状態などが見事に表現されている。物語の中に捕まえられてしまいますね。完全に商業クラスの文章です。

ネタバレありの感想

絵を言葉で表現する、これは中々に難しいことなんだけど見事。

――黒い背景。微妙に異なる色合いの黒ブラックが何層にも渡って塗りたくられたそれは、絵の上部を中心にして波紋のようにグラデーションを為している。その黒の中心――即ち上部には、一本の右手が描かれている。透き通るような白い肌を持った美しい腕。その腕をオーラのように淡く優しい光の色が包んでいる。
真っ暗闇の世界に天から差し伸ばされた救いの手。

絵の天才にして精神的弱者、零子のキャラクター造詣もすごく良い。「天才」とか「奇人」みたいなキャラって色んな作品に登場するけど、分かりやすく特殊なキャラクターだからこそ存在感を出すのは意外と難しい。表面的な派手さだけの薄っぺらいキャラになりがというか。
その点、零子は思考・行動が丁寧に書かれていて「1人の人間」としてのリアリティがあります。

「だ、だって、何も変わって、ない。苦しい、まま、なんだよ。辛いまま、なんだよ」
「…………」
「そんなはず、ないんだ。本当に……本当に、ちゃんとした絵を描ければ、きっとそんなものから、解放されるはず、なんだよ」

ぐらり、と目眩がする。紫から橙色に変わりつつある空が、歪む。
こいつは、まだ、そんなことを。

「――絵が、私を救ってくれるはずなんだ」

読んでてゾクゾクするというか、ほんと印象に残る名言が多い。私の場合は大したものじゃありませんが、何かしらの生きにくさを抱えて創作活動に打ち込んでる人には刺さる物語じゃないかと。はたして自分の創作物は自分を救ってくれるのか?

メイン2人の関係性もすごい緊張感。ある場面で零子が感じた衝撃というか絶望というか、少し分かる気がします。ここもすごく印象に残るシーンでした。「自分には絶対に作れないもの」ってあるんですよね。上手い下手じゃなくて感性の問題として。どうあがいても、そこにはたどり着けない。同じ場所には行けない。そういう作品を見せられると「ああ、別世界の人だな」と思っちゃうもので。
本当に文章力がありますね。書籍化も納得のハイレベル。web版の時点で、完全に商業レベルの品質です。

 

光あふれて死ねばいいのに 

69,898文字

異常な影響力をもつアイドル「織原七重」はひたすらに自分の好奇心を優先し、無自覚ながら周りの人々を破滅に導いていた。問題解決と人命救助を得意とする「黒野宇多」は彼女の暴走を止めるために戦いを挑む。

独特な個性がありつつも読みやすい文章。そして、メイン2人のキャラ造形がすばらしい。天才というか奇人というか、強烈な存在感が伝わってきます。特に主人公の黒野さんが有能でかっこよすぎる!

戦闘場面もダイナミックで爽快。割と厨二病的だから読む人を選びそうではあるけど……すばらしく完成度の高い奇作。何というかめちゃめちゃに濃いです。

ネタバレありの感想

まず、アイドル「織原七重」

パパとママには愛されてるけど、だから何って思う。
愛のことを考える。愛は、あたたかい。やさしい。安心できるし、結構うれしい。たまに窮屈だけど、とても居心地がよい。愛はナナエを包んでくれる。それは素晴らしいものだ。
だけど、すごいと思ったことは一度もなかった。
あの二人は優しかった。愛してるって何度も言われた。ああそうですかそうですか。いつまで繰り返してるんだよ。どれだけ繰り返されてきたんだよ。病人のための言葉だと思う。だから違いますよ。それはナナエの欲しいものじゃありませんよ。

安心して帰れる家があるのは、愛のなせるみわざだ。ナナエをここまで育てるのに、どれだけの慈しみがかけられてきたのだろう。
ナナエを愛してくれてありがとう。本当にありがとう。
でもナナエのことを思ってナナエの思いと違うことをされると、死ねばいいのになって思う。

ナナエさんも良いキャラしてるんですよねぇ。ブレーキの壊れた人間性、毒々しい天才性が見事に伝わってきます。

こういう文章を読みやすいラインで書ける人は貴重。一歩間違えるとポエミーすぎる怪文章になってしまう。

そして、主人公の黒野さん。

楽しかった弱虫ごっこもこれまでだ。

最善のタイミングを見計らって起動する。
まずは鳴瀬克美の鼻を蹴った。地面に押さえつけられたわたしは手下にのしかかられ、鳴瀬克美を目視することは出来ないが関係なかった。今の今まで体を預けていた偽装人格はセーフモードとは違う。ここに居合わせている人物の性能は走査済みで、現在の位置関係も完全に把握している。わたしの見えない位置から、薄笑いを浮かべてわたしの足を広げようとする鳴瀬克美の手をすり抜けて、その鼻をかかとで強打するのは簡単だった。何の苦労も無い。わたしは手持ちのカードを最適な順列とタイミングで切り続けるだけだ。いつものように。

有能! 強い! 賢い! 優しい! 人助けがライフワークで学校内のいじめなどをありとあらゆる手段(暴力を含みまくる)で防止解決するスーパー生徒会長。しかし、真面目というより自信家でブラックユーモアのセンスもたっぷり!
すばらしく魅力的なキャラクターです。商業まで含めても最高級に好みのキャラ。

それにしても有能すぎる。やばいぐらいスペック高い。相手が男4人でも圧勝できるぐらいの格闘能力と、後ろからの不意打ちにも対応できる驚異的な空間把握能力、相手のを心理簡単に把握する分析力、相手からの汚染を防ぐ精神防壁などなど……なんだこいつ!?

個人的に1番好きなセリフは

数億年の蓄積ごときが偉そうに指図するな。

強すぎる……! 恐怖を感じないわけではない。しかし、圧倒的な精神力で本能すらも支配下に置いている。

本作はナナエの暴走を黒野さんが止めようとする展開なんだけど……悪VS正義って印象は薄いですね。なんというか怪物VS怪物って感じ。むしろお前がこえーよ! というシーンの連発だし。ラストバトルとかむちゃくちゃ言ってますよ。

そしてナナエのほうは幼少期からの生い立ちなんかが書かれて人間性がある程度理解できるんだけど……黒野さんの人生はほぼ説明されないんですよ。謎のまま。そのおかげでどうやったらこんな超人が生まれるのかさっぱり想像できない。スペックが高すぎる。

ナナエも良いキャラしてるので最後に才能が破壊されてしまうのは少し残念。自殺者が急増していき狂っていく社会もそれはそれで面白い物語になりそう。しかし、黒野さんのほうが強かったから仕方ないね。

最後に他のキャラだとトドも良い味してる。普通なら十分に優秀でしょうなぁ。素直に負けを認められるの有能。黒野さんからも、かなり高評価されてて笑う。

 

というわけで、私の小説家になろう完結作品ベスト10でした。いや~、web小説にもほんと良い作品がたくさんあります!

 

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カクヨム、おすすめ完結作品ベスト10! (2018年11月版)
カクヨムだけでも200作以上を読んできたweb小説大好き人間である私「イマ猫」が、自信をもって超おすすめできる作品のみを選びました! 完結してるから安心して読める!

とりあえず全部見たいって人向け

【なろう】おすすめweb小説の超まとめ! 250作以上!【カクヨム】
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