カクヨム、おすすめ異世界ファンタジー作17選! (web小説)

旅! 剣と魔法! モンスター!

やっぱ1番作品数が多いジャンルだし、読む方としても「web小説と言えばファンタジー!」って感じはありますよね。タイトルをクリックで本編に移動できます。

=世界観が良い!

=特に管理人のお気に入り

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異世界転移・転生

転移

異世界の邪神が海産物ぽかったので食べてみた

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178,671文字

目覚めたら記憶を失い、別世界の海辺。しゃべる包丁を拾ってみれば邪神たちによって人間は食いつくされようとしているという……でも、邪神の外見が海の生き物っぽくて美味そうだぞ?

日本におけるクトゥルフ神話の多様性を表す作品の1つでしょう(笑) でかい海産物を見たら恐怖より食欲が先に来る。これには邪神もドン引き。文章・ストーリー共にやや単調ながら、襲い来る敵を返り討ちにしながら食いまくる展開がブレない。

ネタバレありの感想

磯の匂いが強くなって来た。目の前には、一体の、イカ、がいた。

「邪神だ…」
「美味そう」
「え?」

邪神と包丁が不審な目で俺をみたような気がした。邪神が止まったその一瞬、俺は包丁を突き立て、一気に邪神を引き裂いた。連続して包丁を振るい続ける俺を、邪神の目が見つめていた。

新鮮なイカのイカそうめんというものは実に美味である。透明なイカそうめんこそがイカそうめんの醍醐味である。

「邪神!?邪神を食してるのかあなたは!?」
「だってどうみても海産物でしょ」
「か、海産物……」
「こういう奴だ、諦めろ。私は諦めた」

包丁にバカにされるのは腹が立つ。アフィラムだったか、は畏敬の念と恐怖と不審の表情がいり混じった顔で俺をみている。

現地人にもドン引きされるという(笑) 殺してからのスムーズすぎる調理が、敵じゃなくて完全に食材判定。殺意じゃなく食欲。邪神からすると超怖いでしょうねぇ。

タイトル落ち・一発ネタの感はありますが、中々にインパクトのある発想です。

専門知識系

主人公が何かしらの専門知識・技術を持っているタイプの作品。読むと勉強にもなったり? 主人公は学生じゃなく社会人が多め。

完結

あのドラゴン、差押えます~県税職員のおっさんが異世界で税金取立~

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263,953文字  (なろう版

気付いたら異世界に居た県税職員の「サクマ」。地球に戻るまでの間、前職のスキルを活かして税金徴税官詰所の一員として働くことに!?

珍しい職業設定と、優しい大人が主人公だからこその落ちついたストーリー展開が魅力。

 

空手バカ異世界 ~物理で異世界ケンカ旅~

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130,927文字

トラックと戦い意識を失った男は女神に選ばれ異世界へと送られるが……チートスキル? そんなものは不要! 自らの肉体だけを唯一最大の武器とする――それが、空手だ!

ひたすら空手で敵を倒していくのが見事。作者さまの知識がしっかりしていて、細かく深い描写。また、一部の敵が使ってくる魔法・異形の体を前提とした「異世界武術」も実にそれっぽくて面白い。

そして、単なる戦闘技術ではなく「武道」としての精神面を活かしたストーリーも熱い。

 

連載中

異世界転生したけど日本語が通じなかった

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165,829文字 (なろう版

タイトル通りの作品。作者さまは言語畑の人のようで、オリジナルの異世界言語を作ってしまったようです! すげぇ! 主人公は言語学の知識を使いながら頑張って解読していくことに。

やや難しい内容だけど流し読みでも面白い。言葉って色々とあるんですなぁ。こういう小説って思いつく人は多いんだけど、実際に書ける人は少ないもの。尊敬します。

 

魔獣密猟取締官になったんだけど、保護した魔獣に喰われそうです。

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126,058文字

刑事として動物の密輸入などを摘発してきた主人公の「タケト」。飛行機から落ちたと思えばそこは異世界。魔獣の密猟者と間違われるが、誤解だと分かり動物好きを見込まれて魔獣密猟取締官として働くことに!

密猟と保護という珍しい題材に、魔獣たちの迫力がありつつもかわいい描写。もふもふ、ぺたぺた!

ネタバレありの感想

ヒポグリフのいる柵へと駆け寄ると、タケトはその柵に手と足をかけて身を乗り出した。ヒポグリフもこちらに気づいたようで、その猛禽類独特の鋭い目をこちらに向けると、キュイ――と一声鳴いて翼を羽ばたかせた。腹に白い包帯が巻かれているのが痛々しくはあるが、思いのほか元気そうでタケトの顔にも笑顔が広がる。

中には、ふっわふわで淡く黄色くて丸っこいものが六個、入っていた。いや、タケトがおおいをとったせいで、それらがぱちっと目を開けると一斉に十二個の目玉がこちらを見あげた。
タケトでも抱えきれないほどの大きさの、真ん丸の黄色いふわふわが六個。それらはタケトの姿を見た途端、申し訳程度に両側についたちっちゃな羽をパタパタさせると、

「「「「「「ピ――ッ」」」」」」

同時に鳴きだした。
見つけた。間違いない。フェニックスの雛たちだ。

おお~、かわいいぜ!
こういうモンスター・魔獣に注目したファンタジーも私は好きですねぇ。せっかく不思議生物もたくさんいる異世界なら、人間同士だけの話で終わるのはややもったないというか。次はどんな魔獣が出てくるのか読んでてワクワク。

主人公のタケトも立派な大人であり優しい。高校生ではなく社会経験豊富な刑事ですからね。単純に「密猟=悪」と断じてしまうのではなく、貧しい地域の住人は違法だと分かっていても密猟しないと生活ができない、ということも分かっている。悪人だけが犯罪をしているわけじゃないと。

設定・ストーリー共に、異世界転移ものの変化球として良い味してる作品。

主人公以外が地球人

連載

異修羅

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541,720文字 (なろう版

恐怖をバラまいた「真の魔王」は討伐された……しかし、勇者は名乗り出ない。新たなる時代の象徴が必要だ。ならば、世界中から強者を集めて勝ち残ったものを「勇者だった」ことにしてしまえばいい!

15名の最強決定トーナメント群像劇。出てくるキャラクター全員がやばいぐらい強くて、めちゃめちゃかっこいい。1人1人が主人公もしくはラスボスになれそうなぐらいの存在感がある。それを1つの作品にぶち込んでしまうなんて! ものすごく贅沢な作品ですね。

私のお気に入りは「星馳せアルス」さん。小さな声でゆっくりしゃべるけど、とてつもない強欲さを持っている3本腕のワイバーンとか……キャラ立ちすぎでしょ。

そして、キャラばかりではなく全体の世界観も「客人(まろうど)」を中心にオリジナリティがあってすばらしい。呪文の詠唱もセンスを感じますね。すべての要素が驚異的な完成度。

安定して往来可能

2つの世界を割と簡単に移動できてしまう作品

完結

異世界ゲート審査官の日常

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235,453文字

主人公は入界検査官。異世界から危険な生物・問題ある人間が入ってこないようにチェックするのが仕事。今日も面倒なやつらがやってきて!?

検査官という発想が面白い。ストーリーはギャグコメディ……かと思えば、割とシリアスでハードな話も多いです。まぁ、魔法・アンデッド・魔族やらのいる危険な世界とつながってるわけで。そりゃ問題も起きますよねっていう。

 

異世界でパート冒険者しています ~ヒマワリマートの第4倉庫~

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120,145文字

普通の主婦、「高梨美香」38歳。働き始めたヒマワリマートで第4倉庫の管理を担当している。しかし、そこは不思議な空間につながっていた! 異世界で出会った人々と秘密の活動が始まる。

素直な対応と細かいことを気にしない精神力が実に主婦らしくて面白い。また、異世界の住人たちは人間と比べて小さく可愛い、というのが良い設定。意外と見ない世界観な気がする。ストーリーも基本ほのぼの。

連載中

ここから↓は転移転生要素なし

世界観のテンプレ度高め

冒険者、エルフ、ゴブリン、ダンジョンなどなど……いわゆるRPGゲーム風に近い世界観の作品

非アクションもの

完結

魔王は呪文を唱えた! モンスターの落とすゴールドが下がった! 経済は混乱した!

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106,956文字

ファンタジー小説の皮をかぶった経済学入門。デフレ、インフレ、そもそも貨幣とは? 貨幣経済の基本が楽しく分かる! アイディアがすばらしい

小説としてもギャグと突っ込み大量で笑えます。イルグレットさんが良い味してる。そして、シーギスルンド君のあつかいが最後まで悪すぎるのは同情しちゃう……(笑)

ただ、あえて設定に疑問を向けるなら「貨幣となる物がモンスターを倒すたびに生産される」と「社会全体での貨幣量が増え続ける」わけで「インフレしそう」だとは思いますけど。現実の地球だと金・銀が無限に採掘できるみたいな状況なのでは?

連載

ハイファンタジー

世界観・設定にオリジナリティがあるもの

非アクションもの

完結

花咲く都のドールブティック

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226,098文字  (なろう版

ドールのためのドレスや帽子や靴やアクセサリー……そういった品ばかりを作っては売っているお店・茉莉花堂。そこで働く少女とドール、その周りの人々の物語。

ドール(人形)と登場人物、それぞれの華やかな服装が細かく丁寧に描写されていて魅力的。作者さまのこだわりを感じますね。

お相手との恋愛関係の進み方も、とても夢がある。男のロマンならぬ「女のロマンチック」が詰まった物語だと言えるのでは。でも男性が読んでも色鮮やかな世界で普通に楽しめると思いますよ。

 

魔法の杖の作り方

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146,400文字

魔法の知識が公開され、社会が大きく変化し始めた時代。細工師という夢を失った少年「ラスト」は偶然に見た魔法の杖の美しさに心奪われる。初めての杖作り、導くのは森に住む魔女。魔法とは? 魔女とは何か?

産業革命が科学ではなく魔法によって実現した世界だと表現できるでしょう。自然の中で杖の材料を集めて作りげていく描写が良い。実にファンタジー。物づくりって苦しいけど楽しいですよね。こういう小道具を中心にした作品は面白いものが多いような。

ただし、男でも「魔女」と言われているのは気になるところ。性別に制限が無いなら「魔法使い」または「魔人」と呼んだ方が適切だと思うけど……そこは雰囲気重視なんでしょうか。

 

旅は竜連れ世は情け

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92,819文字

片腕の少女「アイシャ」は、右目を失った竜「ジーヴ」と共に旅する契約を交わす。少女は生き別れた兄を探すため、竜は一族の生き残りを探すために。人間の町と竜の群れ、2つの場所は同じ日に襲撃された。はたして望む相手は見つかるのか? 敵の正体は?

丁寧に書かれた王道ファンタジー。偉そうな竜に胆のすわった少女、凸凹コンビだけど絆はある。定番の雰囲気だけどすばらしい関係性です。世界観としても海と大陸が関わってきて広がりを感じられるのが良い。

ネタバレありの感想

おそらく人間ならば、意を決して助けに行くのだろうとは思う。しかし、竜は人間を助けない。小娘にも言ってある。共に旅をしてきた相手が仇の手に落ちたからといって、義理立てする必要もなかろう。あの小娘は仲間や相棒などではなく、ただの非常食なのだ。
そう、この俺の、非常食だ。
きびすを返す。目的地を元の宿に据える。大きく欠伸をし、肩をぐるぐると回し、ごきごきと首を鳴らす。
今夜はたっぷりと眠らねばなるまい。
夜が明けたら、思う存分大暴れできるように。

(中略)

「さあ、返してもらおうか。俺の非常食を」

猛々しい外見に反し、よく通り品のあるバリトンで、竜はのたまう。

「小娘はどこにいる。無益な殺生をしたくはない、教えろ」

なんだかんだ助けてくれるっていうね(笑) 相棒じゃなく非常食だけど盗むことは許さない。ツンデレとは違いますが、こういうの良いですね! お互いに少し素直じゃない関係性!

そしてメインの2人だけでなく、世界観としても海と大陸が関わってきて広がりを感じられるのが良い。

兄は船乗りだった。漁師というわけではなく、王立学術協会アカデミーから資金提供を受け、海洋調査をしていた。そして同時に、兄は竜の研究者でもあった。
竜と海。二つの関連があたしには見当もつかない。兄は多くを語らなかった。仕事についてあたしが尋ねると、兄はいつだって困り顔で笑うのだった。だから、あたしもそれ以上は聞かなかった。

はたして兄の研究とは? 途中で明らかになるんだけど、なかなかに壮大です。新大陸とは! 文字通り世界が広がる。竜にふさわしいスケール感がある設定。

最後にジーヴが黒竜の女性とあっさり旅立っちゃうのは、微妙に寝取られ感がある……? アイシャは惚れてるっぽいし。まぁ個人的には好きな展開ですけど。竜は竜同士でカップルになるのが自然だからしょうがない。

あとタイトル・各話のネーミングもステキ。旅は竜連れ世は情け、情けは竜のためならず、苦しいときの竜頼み、竜の手も借りたい……ことわざを上手く改造しててユーモアたっぷり。

文章力が高く、とても上手くまとまっている作品です。

 

郵便配達アーリィ&アープ

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73,303文字

郵便配達業を営む少女「アーリィ」。そして、相棒の「アープ」の正体は1000年を生きる竜。2人が運ぶ手紙を巡る、剣も魔法も登場しないファンタジー連作短編。

いわゆる魔法は出てこないが竜・人魚などなど、しっかりファンタジー要素あり。とてもテンポが良くサクサクと進む。主人公たちはあくまで「郵便配達人」、その場所の問題を解決するヒーローではない。出来事は深掘りされずに終わってしまうが、逆にそれが想像を膨らませてくれる感じ。

ネタバレありの感想

深い深い森の奥、真っ白な林檎の花が咲き乱れるところに、女王の住む城がある。城の周辺には銀の狼が棲んでいて、城と女王を護っており、近づいた人間は殺されてしまう。
そんな伝説のある森に、旅の若者が迷い込み、行き倒れた。
気がついたとき、彼は小さな城の中にいて、傍らには黄金色の髪をした美しい女性がいた。それから、若者と女性は二人で仲良く暮らした。
しかし、あるとき目を覚ますと、若者はまた、どこかわからぬ森の中にいた。近くの村の猟師に助けられた彼は、初めて伝説を聞かされる。それでは、彼女は〈林檎の城〉の女王だったのか。

銀の狼に守られた女王、ミステリアスで幻想的ですねぇ。やはり美しい光景の出てくるファンタジーものはステキ。

ストーリーは短いけどしっかり味がある。個人的には第4話が好き。はたして林檎の城の女王と旅人の結末はどうなったのか……最後まで書かれてないからこそ余韻があるんですよね。

また、竜であるアープの人間とはズレた感覚がユーモアたっぷりに上手く書かれているのもいい。ちゃんと「人間とは別種族なんだなぁ」と思わせてくれます。アープの日記シリーズ、くすくす笑っちゃいますね~。
派手さは無いけれど、丁寧に書かれたファンタジー作品です。

連載中

幻影譚

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173,333文字

七世紀初頭、ドラグニア小大陸に栄えたウルズ王国。かつて竜とともに在ったその王国で、運命に翻弄されながら懸命に生きた人々がいた。そして、王族たちの複雑な恋愛感情が国を大きく動かすことに……

作者さまいわく「大人も男性も楽しめる少女小説を目指した、大河ファンタジー」。まさにその通りで、練り込まれた世界観と迫力ある語り口の壮大なるファンタジーでありつつも、主人公たちの恋愛感情と異性関係が中心となって話が展開していくのが特徴的。

また、単なるファンタジーではなく「ドラグニア小大陸と竜が実在する世界で、中世の歴史を現代日本の筆者が振り返っている」という非常に凝った設定なのもすごく良い。作者さまの遊び心と実力の高さが伝わってくる。

ネタバレありの感想

すると逞しい腕が背後から伸びて、頬に触れた。咄嗟に反応できず、エヴェルイートはされるがまま、その手に導かれるように後ろを向いた。ベルナールと目が合う。まただ。真正面からこの新緑色の目に見つめられると、身動きが取れなくなる。

ベルナールは、エヴェルイートの横髪をそっと撫でるように耳にかけて、そのまま耳たぶまで指を這わせた。

恋愛の心理描写、そして体の触れ合う瞬間の動き。これらの描写が丁寧で作者さまのこだわりを感じます。やわらかく熱い表現というか。男性作者が書く恋愛ってのは大抵の場合で勢いありすぎますからね(笑)

また世界設定がとても良い。

七世紀初頭、我らが日本においては聖徳太子が激動の東アジアに対応するための国造りを進めた時代、アラビアではムハンマドが天使ジブリールより啓示を受け、ヨーロッパではパンとサーカスの終焉を迎えた時代、そのすべての影響を受けるような場所にありながら独自の道を歩み続けていたドラグニア小大陸の南西部に、ウルズ王国は存在した。

筆者は、日本人らしくおおらかな宗教観を持っているため、彼らの教えや風習を否定するつもりはない。むしろ数年前に上野の特別展で見た、やけに美しい神子のミイラや副葬品には畏敬の念すら抱いたし、火葬の手順や道具を紹介する展示品の数々には親近感を覚えた。

すばらしいセンス! こういうの大好き!
普通に異世界ファンタジーだったとしても面白い作品ですが、地球上の出来事だと想像すると迫力とリアリティがさらに増しますね。
本格ファンタジーな少女小説。興味を引かれた人はぜひ読んでみるべき作品です。

私の好きなキャラを言うと、紅の章まで読んだ範囲ではアウロラでしょうか。才女だけど嫉妬深い面があり、強く見えるが孤独を抱えている。そして、とある場面では衝動に身を任せちゃって「ちょ!? 何やってんすか!?!?」な大事件を巻き起こす人間味がある(笑)

 

魔道具職人アルト

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147,544文字

小さな村の魔道具職人「アルト」は突然姿を消した師匠を探して街にやって来た。修理屋の工房に雇ってもらい、情報を探すのだが……?

丁寧で落ち着いたファンタジー。派手な魔法は出てこず、魔道具と職人たちを中心とする世界観が心地よい。また伏線の回収なども見事。

 

軍師日記

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92,855文字

中国モチーフの世界設定。祖国に追われた主人公は北方遊牧民族に身を寄せる。そして、復讐ではなく、自分の安全を確保するためだけに国を焼こうと暗躍する。

ナチュラルに外道で、自然な流れで人を駒として使い潰し火計を実行する。それが邪悪な存在「軍師」である! クソ畜生な軍師的思考回路がすごく面白い。とてつもないセンス。邪悪な名言が多すぎる。

ネタバレありの感想

焼き払う。
軍師的には、これをやって初めて一人前。
むしろ、焼き払ってない軍師なんて素人ですよ、素人。

古今東西、軍師と言うのは火に愛され、火を愛し、焔で劫火を引き起こしてなんぼ。

言い換えれば、別に、真面目に正面衝突とか軍師がやるわけないでしょ。
軍師なんだから、相手を謀殺なり何なりしますよ。
最悪、焼けば何とでもなる。

邪悪な先人たちは、いつも困ったときは火を使っていた。
艦隊を焼き払い、村落を焼き払い、城を焼き払い、時に軍隊も焼いた。
畑も焼いたし、酷い時には桟道だって情け容赦なく燃やした。

困ったら火計!
困る前に流言飛語!
基本はいつも予備計画!

軍師の倒し方。それは、喋らせないことである。
究極的には、余計なことをする前に首をはねろ。

鎮北大将軍ならざるとも、緊朝においてある程度以上の高位高官は例外なくこの原理原則を知悉している。

天下に居場所のない獣、それこそが軍師という人の皮を被った怪物なのだ。

サイコパスと言いますか、自覚のない外道っぷりがすごい。何をどうやったらこんな文章が書けるのか……作者さまの脳内こそが不思議。

これが発想力の違いなんでしょうかねぇ、一般人には決して思い付けない物語です。ちなみに作者である存在X氏は、幼女戦記の作者であるカルロ・ゼンさんと同一人物です。さすが、としか言えません。

 

城壁都市案内 AfterDragon

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53,283文字

もはやドラゴンたちが消え去ったAfterDragon時代。考古学者たちはBefoerDragon時代の都市国家、通称「城壁都市」の発掘と研究を続けている。ドラゴンと人が共存した街の文化・構造・歴史はどのようなものだったのか?

繊細かつ本格的に作り上げられた創作民俗。読んでいるうちに、ドラゴンが飛び回り水と多肉植物で輝く城壁都市が脳内に浮かんでいきます。そして、AD時代の遺跡となった姿もまたロマン。世界観好きにはたまりませんね。

ネタバレありの感想

「図書館」は数千年の時の流れを経ても、内部はほぼ完璧な状態で残されていた。

分厚い壁は岩盤を削り構成され、地下へ地下へと続く「図書館」は酸素や光の届かない密閉された空間が構築され、細菌やカビ、生物、災害による書籍の劣化を防ぐ対策技術が施されていた。高度な技術知識がB.Dに存在したことが、たくさんの調査員を驚かせた。城壁都市の文化レベルは、語り部が創作で語るだけでそれまで誰も実物を見る事が無かったからだ。

水質管理は多くの方法がとられ、主に水質変化に敏感な水竜の放流、毒物・汚染に反応する水竜のうろこ、水草などでチェックされる。

Viaducヴィアディックには水竜が住み、異常があれば人に知らせた。(*3)そのため大水楼閣は水竜が住める大きさで建造され、その大きさは水竜王トモエリバを基準にされている。水楼閣建造には特殊なドラゴン石が必要とされ、長い時をかけて拡張されていった

ドラゴンと人間との関係、都市の構造と特徴……よくぞここまで練り上げたものです。作者さまの想像力は素晴らしい! こういう作風すごい好き。

また、後半となる「第二次侵略攻防戦」は戦争ものとして迫力満点。直接的な戦闘シーンは書かれませんが、人々と竜の勇気、緊張感、そして戦いの痛みが伝わってくる。私はドラゴンペイン・ベオルフさんがお気に入り。強くて自由!
これぞ本格ファンタジー。壮大なる1つの世界がここにあります。

 

やっぱ色々なアイディアがあって楽しいジャンルですね~