巨大兵器に乗り込み敵を撃て! 個性的な武装と熱いバトル!
◇=世界観が良い!
〇=特に管理人のお気に入り
完結
終末翅奏少女リリウス☆セレナーデ

終末翅奏少女リリウス☆セレナーデ【完結済】(鉄乃 鉄機) - カクヨム
全球凍結世界で少女達は恋をする。いつの日か、どちらかが消え去るとしても
239,653文字
謎の巨大機械群によって大部分が凍結されてしまった地球。最後に残った島の切り札は、全高600mを誇る人型古代遺構〈リリウス〉。操縦するのは2人の少女。戦うたびに、ちょっぴり地球は抉れるけれど乙女に構う余裕はない。リリウス! マジカル・リンケージ!
超巨大ハイパーロボット×百合! 600mの巨大さ、手足を振るだけで音速を超えビームを撃てば地形が変わる! 戦闘シーンの迫力がとにかくすごい。
そして百合ものとしても熱い。丁寧な心理描写、リリウスの謎と副作用、残酷な真実……そして最後につかむ奇跡。壮大なるSFガールズラブに仕上がっています。
ネタバレありの感想
鮮烈な発光。暴れ、噴き出すような光から、ピンと張った絹糸のような光へ。
瞬く間に絞り込まれたγ線の光跡は、吸い込まれるように山肌へと着弾。その地層深くに至るまでの岩盤を、一瞬にして赤熱するバターへと変えていた。
まるで誰も着弾に気付いていないかのような、束の間の静けさが辺りを覆う。
その間にもボコボコと真っ赤に膨れていく山肌、絶叫寸前で沸騰する大気。遅れてやって来た大爆発が、止まった時を引き裂いた。
一拍おいてから炸裂した溶岩の量たるや、山一つが丸ごと溶岩へと変わったようなもの。直径数kmに亘って吹き飛ばされた山脈には、大都市一つを飲み込んで余りあるほどのクレーターが口を開けていた。
落下する数千、数万もの火山弾が次々に大地へ突き刺さっていく中、リリウスは地上へパワーダイブを敢行していた。
急激な圧力降下で発生した雲がリリウスを包み込み、突如として現れた白い雲の只中に数百万トンクラスの質量が包み込まれる。余熱で燻る岩石の豪雨をすり抜けるように、全幅1km近い弩級の蛾は地上を目指す。
落下に次ぐ落下、徐々にペースを速める衝撃波の乱打。
数秒後、音さえも引き離して落下するリリウスは、地面に辿り着いていた。
ほとんど減速も無いままの着地に、リリウスすらも包み込むほどのキノコ雲が立ち上がる。
ちょっと戦うだけでこれですよ(笑) すさまじいスケール感。ダイナミックすぎる戦闘描写に引き込まれますね~。バトルが毎回かっこいい。
たぶんリリウスと敵の闘いは宇宙からでも観測できるぐらいの規模なのでは……特に夜だとはっきり見えそう。ぱねぇ。
そして、このリリウスはただのロボットじゃない。リリウスの覚醒、中盤のシーンは読んでて背筋がゾクゾク。腕が増える感覚……想像すると、ものすごく気持ち悪い。
登場人物は非常に少なく、ほぼメインの2人だけ。良い意味で「セカイ系」な雰囲気? シンプルな構図で私としては好み。
SFとしての本筋は第参楽章で終わっているとも言えそうなんですよね。だけど、少女は諦めない! 受け入れない! 敵だったはずのマカハドマに乗り込むのは燃える展開でしょ~。超スケール百合痴話喧嘩!
ビターエンドで終わらせず、恋の力でハッピーエンドを作り出す! 王道ながら熱い! 新宇宙での再会シーンは涙腺が緩みますね。
ハイパーロボット・百合の両面で良い味してる作品です。
イソラ

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221,659文字
深海に眠っていた謎の人型ロボット「イソラ」。秘匿された兵器を使って始まる、世界の裏側を支配する勢力との戦い。しかし、敵も正体を探ろうと情報戦を仕掛けてくる。はたして主人公たちの本懐は達成できるのか。
古めかしい単語に、詩情あふれる描写。なんというか「文学的」な文章が非常に美しく重厚。まぁ難しい漢字が連打されるのでやや読みにくい部分もあるけれど。また戦場となるのはロボものでも珍しい深海であり独特な戦闘シーンも魅力的。
ストーリーとしては日本の現状に苛烈な憂国の士が決起する、という内容であり少し読む人を選ぶかも。物語として読む分には気にならないと思いますが。
ネタバレありの感想
「そろそろ時間、ですか」
老人の穏やかな声景色は、山中で人知れず流れる瀧を描いた墨画の清浄さが湛えられていた。
老人の視線の先――開け放たれた書院障子の先では、深海の其れとはまた異なる射干玉の夜が、虫の涼やかな鳴きに透度を高め、限りなく満月に近い太陰は紗と棚引く雲で其の口許を隠していた。笹の囁く葉擦れが沈みゆく季節を儚んでいる様子は、生で膿みゆく心に何故か響く何かがあった。
既に老境の山を登り始めたというのに老人は矍鑠たる精気に満ち、しかしながら輝きを深めて重く照る刃紋の如く、其の精気を鋭い怜悧さで押し潜めていた。
いかがでしょうか……う~む、これはすごい文章力ですよ。web小説でここまで格調高いものは非常に貴重。
そして、これ系のこだわりある文章というのは詰め込みすぎで読みにくいパターンが多いんだけども、本作では表現のこだわりと読みやすさのバランスがしっかり調整されているのも見事。
ちょっと一部を引用しただけじゃ凄みが伝わりませんね、ぜひ自分の目で読んでいただきたい文体です。
そして、ロボものとしては
・武器が巨大な日本刀のみ
・戦場となるのは深海
という独特な設定が実に魅力的。
当然、水という抵抗を与えられて剣速は鈍ったものゝ、修めた剣の技は些かも狂いなく、海中に於いてもなお刃筋は鋭く――否、むしろ海中であるからこそ、太刀筋の曇りの無さが浮き彫りとなる。光無き深海で振るわれた太刀は、視界を封じられているとは思えぬ程正確に原潜の外殻を叩き、そして減衰の振動吸収材の更に深部へと割り入った。
装甲を割断する斬撃。比叡丸の一刀を皮切りに、残るイソラ三艇も同様に、推進力と膂力を併せた潜水剣術を駆使し、原潜へと殺到し斬り通った。
深海を進む潜水艦に、ロボットが日本刀で切りかかる! 絵になりますね~。潜水剣術! 実にロマンです。
水陸両用の奇襲兵器。だからこそ水圧に耐えられ深海でも威力を発揮する日本刀が最適な武装となる。
ここら辺の設定・論理付けは作者さまのロボ好きを感じますね。なるほど~、って感じ。やはり、それなりのリアリティがあってこそのSFでしょう。
また、中心人物となる「安曇野正義」のキャラ造形がすばらしい。固い信念と「怪物」とまで呼ばれるほどの情報戦の上手さ。周りに優しく堂々としていながらも、決して全てを明かさない闇と謎を持っている。情報収取パートのクオリティが高すぎる。空気感がすげぇ。ロボ要素を無くしても作品になる質の高さ。
めったくちゃ良い味しまくってます。超かっこいい。実際、話的にはロボットよりこの人がメインですからね……
あと、最後のセイレーンとの海底大決戦は別にイソラ組が負けても計画は遂行できるという策士っぷり。研究者をスパイとして潜り込ませるのが本命……イソラ組は相手に食いつかせるための餌。怖い人ですよ。
文学的な物語に、上手くロボバトルアクションを融合させている。非常に独特な作品です。
ルナティック・ハイ

ルナティック・ハイ(ハムカツ) - カクヨム
月面超兵器 vs 地球量産機
219,526文字
アポロ計画によって発見された超古代遺跡の探査基地が、月面帝国を名乗り地球に対して宣戦布告。そこから20年後、ようやく結ばれようとしていた終戦協定は、過激派月人グループによるテロリズムによって打ち砕かれた。降下してくる超古代発掘兵器、迎え撃つは地球の量産型ロボ。
良質ロボットアニメな世界観。地球の自転をエネルギーにするという設定ゆえに、戦いは地上戦。熱い戦闘シーン、甘酸っぱいヒロインとの関係、絡み合う各組織の思惑……それぞれの要素が上手くまとまっている。
ネタバレありの感想
主人公たちの機体である猫耳アンテナでずんぐりむっくりな「バンガード」は想像するとキュート。
敵の切り札「ルナティック7」、超古代文明の遺産を直接に組み込んだ超性能ロボ、もそれぞれ個性が立ってて良い存在感してます。
そのまま左手に装備した打突シールドを振り抜き敵機を突き飛ばす。慣性制御装置で姿勢が崩れるのを防ごうとするが、それを完全手動モードでドラム缶と同サイズの左手に注ぎ込んだ余剰ベクトルで打ち消し押し倒す。
IAは地球の運動エネルギーを攻防走に転用できる。だがそれは地に足で立っている場合に限られる、姿勢を崩した敵機にダメ押しの3点バーストを叩き込む。3発の砲弾は胴体を操縦席ごと貫いて、3対の赤いセンサーアイの光が消えた。
『…… ククケケケハァッ! 効かねぇんだよぉ! このグラ・ヴィルドにはよぉ!』
硝煙と土煙を切り裂き、黒い巨体がリニアモーターカーを超える速度でアルファ小隊に向けて突き進む。慌てて周囲から40mm機関砲が放たれるが、それらは全て直撃する前に地に落ちた。
攻撃目標地点に目をやれば、原型をとどめた砲弾がミステリーサークルの様に地面に突き刺さっている。
(中略)
『だよなぁ! 現象を見りゃ、予想もつくし名前の時点で隠しちゃいねぇ! こいつの能力は重力障壁! 水平方向からの砲弾は地に落として無効化出来る! なら垂直って考えるのが理性的な人間って奴だ、素晴らしいぜぇ!』
重力を操作する黒いロボット……この王道悪役な雰囲気! いいですね!
敵の装置を取り込みまくった、最終決戦のギガンティックバンガードもかっこいい~! ミサイルばらまきながら空中から突撃とか男のロマンでしょ~。
無駄のない文量でテンポよく完結したロボットバトルアクション。熱くて燃える戦闘シーンがたっぷりな作品!
最後にある機体説明コーナーも、作者さまのこだわりを感じて好印象。やっぱメカ・ロボ系の作品に武装とかの解説があるとグッときますよね~。
メタンダイバー
201,456文字
舞台は木星。機械の反乱により、過去の技術が大きく失われ宇宙に飛び立つことも出来なくなった時代。主人公「トマス・マツァグ」は40歳の中年男性。人型機動機械“メタンダイバー”を繰って細々と生活していた彼はある日、旧知のジャンク屋から記憶喪失の少女の世話を頼まれる。
はるかに高い宇宙にあこがれる男が、反重力装置によって任意の方向に「落ちる(ダイブする」ロボットにのって戦う! メタン「ダイバー」、このタイトルとネーミングセンスがとにかく素晴らしい。
ストーリーもしっかりまとまっていて、分量も長すぎず読みやすい。
巨神装機トーヤ ~小人の世界に迷い込んだ僕が巨大人型兵器になった件~
172,452文字
「小人の世界」に転移してしまった少年「遠矢(トーヤ)」。気付けば、強化外骨格装甲『巨神装機』を装着し巨大人型兵器として戦うことに!? 共に戦うのは小人の少女。敵の巨大兵器も遠矢から見れば等身大! 異色ロボットアクション。
主人公が巨大ロボに! なかなかに珍しい設定で新鮮(実際にはパワードスーツ状態だけど)。小人たちとのサイズ差も想像すると楽しい。
SFとしても世界間の移動によって圧縮された「原子間縮小金属」による超装甲など、良い感じに理論建てされてて雰囲気出てます。
ネタバレありの感想
動けないはずだった。遠矢は知らぬ間に全身に『甲冑』を装着させられていた。
それも、特撮のヒーローとアニメに出てくるパワードスーツ、あるいは装甲服のような、全身を包むものを 。
(中略)
表面は不思議な金属光沢を放っていて、全体的に淡いブルー。随所に濃紺と白のラインが配色されている。いわゆる『試作機』的な色合いだろうか。
胸の装甲は心臓の真上あたりで一段と高く突き出ていて、上部には半透明のガラス製コックピットがあるのが見えた。
それは、戦闘機のコックピットのような風防そのものだった。
「僕の胸に……操縦席!?」
遠矢は驚き、もはや言葉もない。
『――そう! ここよ、ここ! こっち』
珠希(たまき)の声に導かれるように、遠矢は自分の胸に設えられたキャノピーの中に視線を向けた。
「た……珠希?」
中で小さな人影が、ひらひらと手を振っているのが見えた。
目が覚めたら自分が巨大ロボあつかいで、小人が操縦しようとしている! これは驚きますよ(笑) 異世界転移ものとして考えても、相当にカオスな状況でしょう。
筆力がありアクションシーンは大迫力。しかし、これも小人目線とトーヤ視点だと、かなり印象違うんでしょうね~。
そして、巨人と小人、だけで終わってないのが設定を上手く使ってて好印象。
転移門はね、不思議な事が起こるの。巨神世界のサイズで転移してくる物ばかりじゃないわ。縮小……リダクション現象が起きている事例もあるのよ。例えば、トーヤくんが身につけている巨神装機の表面装甲は、原子間縮小金属……リダクション・メタル装甲なの。ブラックホールのような超重力環境下で原子間の素粒子間隔が超圧縮されて、特殊な結合状態となった物質の形態よ。
超圧縮金属の特殊装甲……燃えますね! その他の敵味方のロボ・装備もかっこいいのがたくさん登場!
ストーリーもロボットアニメ風な流れできれいにまとまってます。ダラダラせずテンポが良い。プロローグがほんとロボアニメって感じ。まぁ、実際にアニメしようと思ったらサイズ差のせいで絵にするのが難しそうだけど。同じ画面に入らない(笑)
珍しいアイディアをきっちりと仕上げており、作者さまの実力が感じられる作品。
廃惑星地球の歩き方

廃惑星地球の歩き方(月下ゆずりは) - カクヨム
歩行戦艦が殴り合うポストアポカリプスへようこそ!
115,116文字
人類の終末戦争から数百年後――と人々は語る。100mを優に超える超巨大歩行兵器「ウォーカー」を使った争いが絶えない時代。謎の機体と共に、1人の少女が目覚める。
動くだけで大地が振動し、戦えば余波で周囲の建物が崩壊する。射撃武器よりもその質量と硬さを活かしたウォーカー同士の格闘こそが攻撃の中心。巨大兵器の描写がとても重量感があり大迫力。金属の音が聞こえてくるというか。
素早く空中を移動し、遠距離から撃ちあい、最後は派手に爆発する。そういうスーパーロボットの方向性ではなく、あくまで「金属兵器」な雰囲気がいい。やや読みにくい部分もあるがロマンが詰まっている作品。
ネタバレありの感想
サンダー・チャイルドが身を屈めるように姿勢を崩す。酷くゆっくりとした動きであったが、拳が下方から敵の頭部をたたき上げるアッパーを狙い動き始めた途端に音速を突破していた。300mにも達する巨体が振るう肢体は、もはや想像を絶する速度を生む。鞭の末端が空気を裂き炸裂音を鳴らすのと同様に。
対するは、地を蹴り、叩き潰すコースを取ったミラージュの左拳であった。
衝突。
もはや爆弾が炸裂したに等しい衝撃が発生する。海面が引き裂かれ白い飛沫と泡が大量に生じた。拳という爆心地から同心円状に拡散する破滅的なソニックムーブが逃げ遅れた海鳥達の内臓を潰した。
サンダー・チャイルドが吹き飛ばされていく。海底を脚部で擦りつつ、クラウチングスタートの姿勢で静止した。装甲表面に浴びた海水が蒸発していき、塩の微小結晶が浮き上がっていた。
300m級のロボの殴り合い! 衝撃だけで空気が炸裂する! くぅ~、燃えますね!
やや読みにくい部分も多いんだけど、表現力という点では今まで読んできたweb小説の中でもトップクラスです。作者さまの「こういうのが書きたいんだぁぁ!」という気持ちが伝わってくる。
縮退炉が起動するシーンは、読んでで背筋がゾクゾクしました……空行を開ける演出がすばらしい! そこからの突撃シーンも実にダイナミック。
サンダー・チャイルドの推進炎が500mに及ぶ範囲を焼き尽くしていく。両足先端部推力偏向ノズルが、船体推進軸を保つべく首を蠢かせていた。推進炎の青い輝きが見る見るうちに範囲を拡大する。大地表面を溶かし、抉り、範囲内の全てを押し流しながら、巨体を進ませていた。
岩盤が捲れ上がった。道に放棄されていた電車がゴミクズのように煽られ飛んでいく。車両が木の葉かなにかのように地上に火花を描きながら滑っていた。溶解した岩石が空中で液体となり、気体となり、大気に溶けて、流されていく。ジェット気流が大地をことごとく洗い流していた。雲でさえ、散らされていく。
この迫力! たまりません……
最後の縮退炉を掴んだままの特攻シーンも、めちゃめちゃかっこいい!
素早く空中を移動し、遠距離から撃ちあい、最後は派手に爆発する。そういうスーパーロボットの方向性ではなく、あくまで「金属兵器」な雰囲気がいい。アニメじゃなく実写の方が似合うと言いますか。すばらしいロマンが詰まっている作品です。
重轟機譚ブラスバルター

重轟機譚ブラスバルター(ハムカツ) - カクヨム
これは愛と勇気の物語ではない。ナイスガイとボーイの物語だ!
77,007文字
突如として地球に侵攻してきた巨大ロボ兵器軍。街が破壊されていく中、少年「ハチ」は不思議な男に出会う。それは圧倒的なナイスガイだった! 少年は反撃用ロボットのパイロットに選ばれ、熱い漢たちの戦いに身を投じていく。
カオスな展開とゴリ押し、突っ込みどころ多数。でも「これは漢たちの戦いだからな……!」と謎に納得してしまう怒涛の勢いがある。漢たちのキャラ造形も分かりやすすぎて面白い。シリアスが多いロボバトル作品の中では異色のギャグ風味。
ネタバレありの感想
もう最初の出会いからして勢い半端ねぇ。
(ボーイ、お前は戦うんだな?)
力強い男の声が響く、例えるならばナイスガイ! 聞くだけで大丈夫だと人に思わせ、任せても良いと思えるカリスマをもった声がハチの脳内に響く!
(だ、誰なの!?)
(んなことはどうでも良いんだ! そのガールを守りたいんだな? ボーイ)
道理を無視した理不尽な問いかけ、けれどハチの心は変わらない。たとえそれが神であっても、自分の中の妄想であっても! ハチの返す言葉は変わらない!
「守りたい! 僕はアルカを、守りたいんだ!」
「OKボーイ! その言葉が聞きたかった!」
声が響いた、ナイスガイな声が。それをアルカも聞いた。仕事中に災難に巻き込まれそれでも周りを気遣うサラリーマンも聞いた。合流した恋人と逃げようとした女性も聞いた。震えながらも畜生と叫び倒れたお年寄りを背負い走り出そうとする不良も聞いた。
『そ、その声は――っ!』
当然100mを超える超巨人を駆る、イケメンもその声を聞いた!
そして轟音が響き渡る! 大気を引き裂き、巨大な何かが振って来たのだ! 本来ならば全てを砕く超質量を、気合と男気で封じ込め、4車線の道路に、赤と、黒と、白と! そして無数の砲門で飾られた巨人が! 空の彼方から舞い降り仁王立つ!
この勢い! すばらしい!
「力強い男の声が響く、例えるならばナイスガイ!」それって例えになってるのか!?
「声が響いた、ナイスガイな声が。」ナイスガイな声とは……(笑)
「本来ならば全てを砕く超質量を、気合と男気で封じ込め」質量は男気で封じ込められますかね……?
いやでも、突っ込むのは無粋ってもの。なんせナイスガイなんですから。
いや~、他にも勢いのある楽しい文章が出てきまくり。
ゴージャスな空間が広がっていた―― そもそもゴージャスとは何か? と問われると悩ましい。豪奢な装飾が施されている? 高価なものが並んでいる? この空間はそのどちらも満たしているが、そのどちらでもない。
何故ならばそれ以上に輝いていたからだ。本物の黄金の輝き! それでいてその光は自己主張をしながらも、決してそこに立つ人間の瞳を刺激することはない。
ゴールドでありながら完全に計算された配置。それがゴージャスさと上品さを両立させているのだ。
財力だけではない。圧倒的な知のゴージャスも満ちている。そんなインテリジェンスに溢れた空間なのである!
すごいセンスですなぁ。納得するしかない。
キャラ設定も直球で面白い。ナイスガイ、クールガイ、ゴージャスガイ、グッドガイ……それって名前になってるの(笑)? いやでも、こういう「キャラ名=特徴」のゴリ押しネーミングもいいものですよね。
ギャグだけの作品でなく戦闘場面は実にダイナミック。大量の火砲! ビーム! 巨大剣! 必殺技! やっぱロボバトルは良いですなぁ。変形はロマン、一斉射撃もロマン。
ロボ戦記の中では珍しいギャグ路線……というか、本作も内容を冷静に見ると普通に殺し合いでシリアスな気がするけどナイスガイたちの勢いにだまされてしまう(笑)
全体を通して作者さまが楽しんで書いているのが伝わってくる。だからこそ読者としてもすごく楽しい。う~ん……ナイスガイな作品です。
個人的に好きなキャラはバッドガイ。心理描写が丁寧で小物悪役として良い味してる。あと、火砲を使えないナイスガイはどうして大量の火砲を積んだ射撃ロボ「ブラスバルター」に乗ってたのか……パイロットの人選ミスってませんかね(笑) いやでも、近接武器だけでも割と強いっぽい? まぁ、ナイスガイだからナイスガイだったのかな(謎の納得)
水無き海のラストダイバー

水無き海のラストダイバー【完結済】(鉄乃 鉄機) - カクヨム
ジジイ共、人生最後の大深度ミッション
75,022文字
ガス惑星である木星を深く潜って行けば、そこに広がっているのは液体金属の海。かつて巨大人型兵器のエースパイロットとして名を馳せていた主人公は、穏やかな余生を送っていた。しかし、航行用AIが何故か超深海へと行きたがって……? ジジイたちの人生最後のミッションが始まる!
音によって捕えられる世界、衝撃波を打ち出す音響兵器、重力崩壊式実弾兵装……個性的な設定と迫力の描写。
連載中
蟲狩りのアンダイナス
267,773文字◇〇 (カクヨム版)
平和な高校生活をしていたはずが、気づいたら巨大な蟲型の人食いロボットだらけの危険な世界に!? 電脳少女とゴリラ型の砲撃ロボットと共に戦いの旅が始まる。蟲型ロボットたちを生み出したのは何者なのか、はたして自分の身に何が起こったのか。
変形機能付きのゴリラ型ロボット、珍しい設定だし男のロマンたっぷり。ロボ系作品の中でも個性が出てます! 戦闘シーンも良い。世界観も色々と面白く軌道衛星から送電してるとか、いったん文明が崩壊して変な部分だけ伝わってしまってる日本文化とかも笑えてSFとしても楽しい。
ストーリーはかなり重厚。ある意味では2章からが本番でしょう。鬱展開と言えるぐらいの重苦しさだけど、一気に物語としての深みが増します。読んでて驚き引き込まれましたねぇ。
ネタバレありの感想
人間の形……と言うには少し歪な形だ。白地に青のライン、あとは黒のポイント塗装にいくらかのマーキングが施された身体は、腕が太く脚と同じかそれ以上に長い。上半身が肥大化したその姿は、ぶっちゃけて言えばゴリラに近い。しかし、ゴリラと言うには語弊がある。何しろ、その身体は見上げるほどに大きい。
そのまま流れるように両腕の手首が折れ、互いに接続される。左の肩から先がパージされ右腕を前方に構えることで、現れたのは長大な砲塔。
「繰り返す! 第三橋の延長線上にいるものは退避されたし! 巻き込まれても知らないぞ!」
出来上がった砲塔の各所に分散された超伝導コイルに、またそれらを束ねる増圧蓄電器に、狂ったように電力が注ぎ込まれる。
腕が大砲になってるゴリラ型ロボが撃ちまくる! さらに両手をつなげて巨大砲に! いいですね~!
いわゆる直立二足歩行な人型ロボとはまた違う魅力。そして変形合体は燃える。すばらしいセンス。戦闘シーンにも特徴が出て良い感じ。
敵が蟲型なのも不気味さが出てるし、動きなどがイメージしやすくてグッド。巨大な蟲、これは分かりやすく人類の敵でしょう!
そして2章の展開は驚きますよ。エミィが敵のかく乱装置!? そして、主人公が食われた~!?!? 死んでますやん! って思ったら、主人公も作られた電脳人ですと!? 読み返してみると確かに伏線は貼ってある……見事。確かに、時間移動よりもこちらのほうが設定的にありえますわな。
ロボものとしてもSFとしても本格派です。
ランナーズ・プルガトリィ ~勝てるかどうかは、ランナーしだい~
152,038文字
西暦2128年。人型兵器「グランドウォーカー」の普及によって 戦争と日常の境はあいまいとなり、各地でテロ・内乱が発生。世界は疲弊していた。主人公「アレックス」も混乱の中で肉体の大部分を失い全身を機械化されている。そんなの中で出会ったのが五感を再現できる特殊な機体と、それを狙う謎の組織。新たなる生活と闘いの日々!
荒廃した世界とロボット兵器! 誘導装置のジャンミング技術によって行われる、剣を使った近接バトルが熱い! 主人公も生い立ちだけでなく性格にも個性があって良い。そして敵キャラたちは騎士道精神があり貴族っぽい雰囲気。ちょっと珍しい設定で存在感ありますね~。
ネタバレありの感想
槍は逸れた。それがどうした。イノシシは、その程度では止まらない。
逸らされた槍は流れるまま、右手を放し、左手一本でささえる。
その流れを殺さず、身をひねり、右の肩装甲を大盾に突き出す。
渾身の体当たりだ。
衝撃が互いの機体を揺らす。
《ブラックナイト》は倒れることこそなかったが、一〇メートル以上後ろに弾かれる。
大地に一対の轍が刻まれた。
あれほどの衝撃を受けてなお、バランスを崩さない。
ロボSFの世界で、あえて剣・槍などを持ってのインファイト。これまたロマンですよ。大型機械がバチバチにやりあうのは燃えますね!
設定的にも収縮性と瞬発力にすぐれた人工筋肉が普及していて、ロボ系の中でも格闘戦に適した構造。
また操作方法などにも詳しい設定があり作者さまの機械・ロボ愛を感じます。
そして主人公が全身機械ってのもインパクトある設定! せっかくSFなんだし、こういうキャラを出すのは良いですよ。そして性格のほうもweb小説だと意外と見ないタイプでは。ちょっと間が抜けてて、難しいことはよく分からず、素直。いわゆる「田舎の子供っぽい」と言いますか。
そして敵のキャラ付けが印象的。
基地施設はあらかた制圧してしまったようだ。
航空輸送機があったが中は空だった。当然すべて破壊した。
目標を運び出されては困る。
こんなものは戦いではない。我々は誇りある騎士となる身だ。
殺戮を楽しむようなやからでは断じてない。
先ほど倒した機体を含め全員、無事脱出まで確認した。
他の同志たちがどうかは知らないが、自分はこのやりかたを曲げるつもりはない。
ロボSFなのに騎士! 私欲ではなく崇高なる目的のために戦う同志! 世界平和を大義名分にする! いいですね~。
やはりバトル系作品では「どれだけ魅力的な敵キャラを作れるか?」
「悪役に個性が出せるか?」というのが面白さのキーポイントになってきますが、この作品はグッと来ます。
ロボ・キャラ設定の両方ともに良い個性がある物語です。
軌道砲兵ガンフリント
147,460文字 (カクヨム版)
少し未来。外惑星にまで活動領域を広げた人類は、未知の敵性体との交戦に突入してしまっていた。熱き戦いと人間ドラマの実弾スペースオペラ。
アニメのようなビーム兵器は出てこず、硬派な雰囲気。やっぱ実弾は良いですなぁ。宇宙空間での物理学などもしっかり考慮された本格派。ロボットの描写なども丁寧。
私はepisode-2でうなりました。このレベルの人間ドラマが書かれていると、この先の展開にも期待が上がっちゃいますね。また、なろう版には作者「冴吹稔」さまによる挿絵があるのもすごい。漫画家のアシスタントをしていた経験があるそうで、かなり上手いです。兵器がかっこいい!
ネタバレありの感想
宇宙空間での物理学などもしっかり考慮された本格派で驚かされます。なんちゃってSFではなく、古き良きハードSFの系譜。
そこで、クルベたちは現在の軌道の接線方向に対し、外向きの角度をつけて撃つ。モジュールの公転速度と弾体の速度は合成され、そのベクトルは太陽を背にして外周へ向かう。この砲撃に必要なデータは母艦とモジュールをリンクする砲兵管制システムによって精密に算定される。
六百ミリの外殻を破壊しない程度の威力――五十ミリ徹甲榴弾は、ちょうどおあつらえ向きだった。それでもコンテナにはわずかに、ほんのわずかに軌道のずれが生じる。その差を、ヴィクトリクス号のレーザーセンサーは鋭敏に検出していた。
〈計測完了。軌道変動値0.003%、事前の推定値に合致――クルベ中尉、そいつは『砲弾』です〉
ベクトルの足し算、速度の合計、公転周期、質量の差による検出、大気による抵抗……こういった言葉にワクワクする人は読んで損しませんよ! ちゃんと科学的な問題と解決法が出てくるSFというのは貴重です。
挿絵もあり、それぞれの位置関係や問題点などが要所で図解されていて分かりやすい! ぶっちゃけ、ここまで本格的で細かい描写になってくると文章だけだと理解しにくい部分もあるので……超親切! (カクヨム版は挿絵ないのでおすすめ度低め)
設定だけでなくストーリーも高品質。episode-3もいいですね~、人間関係の丁寧な描写。そして宇宙艦隊を1か月以上も動員する作戦が、ただ1人の少女を見つけ出し保護するだけ(ただし超難易度)というロマン!
とても本格的であり、まさに力作と呼ぶにふさわしい。作者さまの熱意を感じる物語です。
なお作者である「冴吹稔」さまは、クリエイター支援サービスであるpixivFANBOXも利用されている様子。作品が気に入った方は、ぜひこちらも訪ねてみてください。
やっぱロボ作品には独特な存在感がありますな!