web小説「霧の塔、白銀の杭」を語る! ~世界観もストーリーも上手い~

序盤から設定が光る! 1つの出来事として無駄がない!

というわけで、今回は小説家になろうから「霧の塔、白銀の杭」について語ります。

霧の塔、白銀の杭
蒸気混じりの霧、サンザシの枝 落ちてくる少女、灰色の少年 // 無料オンライン小説です

空から落ちてきた少女は吸血鬼だった!? そして、それを見つけた少年は機械の体! 吸血鬼×スチームパンク。

総合的な完成度がすばらしく高い良作。文章量としても本1冊分で読みやすいし、とてもおすすめ。

序盤から引き込まれる! 世界観による掴み

どんな作品でも最初の部分は重要。冒頭で読者をつかめるか? 序盤で物語に引き込めるか? つまらないと判断したら消費者はすぐに逃げてしまうもの。

その点、この作品にはプロローグからグググっと引き込まれました。ちょっと引用してみると、

 暗く深い地の底に、その城はあった。
幾歳を経てなお朽ちることを知らぬ、最古の王の住まう城。
不滅の異形たちが住まう城。

その城の一室に、ひとりの少女がいた。

(中略)

その日、少女は朝から期待に胸を弾ませていた。
仄暗い地下都市から憧れの地上に出られる日が遂に来たからだ。
彼女がずっと、ずっと待ち望んでいた日だった。

という風に、物語は地下から始まるわけですよ。どうでしょう? なかなかに珍しく新鮮味のある開幕だと思いませんか。「この少女は何者か?」続きが気になって、作者さまの誘導に載ってしまう。

また、2話で最初の戦いが起きるけど、ここでも世界観の工夫によって魅力が増している。再び引用すると、

フリークスは概して金属を弱点とする。

(中略)

途端に、街を囲む防壁が次々に甲高い音を立てて蒸気を噴き出し、傘のように装甲板を展開させる。
露出したその内部では歯車が勢いよく回転し、次の瞬間、胞子のように金属粉を撒き散らした。

吸血鬼には銀が効く、から着想を得たのでしょうが「フリークス(化け物)は金属を嫌う」という設定は良いですねぇ。いわゆるテンプレ的なゲームファンタジーとは大きく差別化できている。

やはり、何かしら「その作品ならではのルール」があると個性が出ます。キャラやストーリー展開だけで独自性を出すのは中々に難しいのでは。

そして金属粉末をまき散らす防衛設備! とても絵になりますねぇ。漫画・アニメなどでも見てみたくなるシーン。ここまで読んで「この作品は当たりだ!」と確信しました。

世界観に工夫があると第一印象がグッと良くなりますねぇ。

あとは吸血鬼に必要なのは血じゃなくて実は「赤いもの」でありバラの花も補給になったり、吸血鬼は成長しないし忘れない、といった設定も好き。

正統派なボーイ・ミーツ・ガールで無駄がない

設定にひねりが効いているのに対して、展開としては王道のボーイ・ミーツー・ガール。少年「エミス」と少女「クラウ」の出会いと成長の物語。

2人とも悩みがあり自分の居場所を探している。交流しているうちに魅かれるようになり、敵に襲われる中で自分の気持ちを知り、覚悟を決め、パートナーとして生きていくことに未来を見出す。

正統派のストーリーこそ作者さまの力量が問われると言えるでしょう。そして、この作品は上手いです。テンポよく違和感がなく終盤は熱く盛り上がる。

過去に縛られていたエミスが師匠の気持ちを理解し前向きになっていくのは、テンプレと言えばそうだけど胸を打たれますね~。

感想欄で師匠が「故人ヒロイン」扱いされてるのは笑っちゃいますけど! 確かに、見方によっては割と「過去の女が忘れられない男」感あるエミス君(笑)

あとは敵キャラもちゃんとしてるのも良い。この作品の悪役としては騎士位「ズェザ」さんと、黒鋼の王「サダク」さん。そして2人とも強く誇りがあり立派。

ズェザさんも言葉使いはチンピラ系っぽいけど、普通にエミス君を戦士として認めてるし。

サダクさんも、なんだかんだ父親としての情と期待はあるっぽいし。悪役が主人公の踏み台扱いじゃなく、ちゃんと1人のキャラとして描かれている作品はいいですよね。

それにしてもズェザさんはサダクさんになめた口をきいてるけどいいのかなぁ(笑) いくら血族が違うとはいえ騎士位が王に古臭いとか言って許されるとは……意外と吸血鬼の世界は縛りがゆるくてフレンドリーな社会だったり?

※追記 作者さまから返事をいただきました。

吸血鬼は成長しないので転化した時点で品性も確定します。
短期記憶レベルでは繕うこともできますが、根本的にチンピラはチンピラのままです。

とのこと。な~るほどぉ。つまりズェザさんは永遠にチンピラであり、サダクさんの方も「敬語がなってないけど、指摘しても無駄だしな~」と諦めでスルーしてると……これはこれで吸血鬼の社会も面白そう。

 

世界観90点、ストーリー85点、キャラクター70点、総合評価だと100点中82点ぐらいでしょうか。

いわゆるライトノベル的な個性爆発で記憶に残るキャラクターは出てこないので、そこはちょっと薄い? しかし完成度はとても高いと思います。

教科書というか優等生というか、物語に求められていることをきっちり押さえている。世界観で引き込みストーリーで魅せる。

特に、自分でライトノベルを書こうと思っている人はぜひ読んでおくべきじゃないかと。私も昔に少しだけラノベを書いてましたが、作者さまの上手さは尊敬しますねぇ。

どんな小説を書くべきか、どんな小説を「書けるようになるべきか」。お手本になる作品って感じ。

 

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