漫画「ギャラリーフェイク」を語ります! ~芸術をテーマにした名作~

絵画だけじゃない幅広い分野! 業界の裏を書く斬新さ! 魅力的な人間ドラマ!

というわけで、今回は漫画「ギャラリーフェイク」について語ります。全32巻+自選集1冊。作者は「細野不二彦」、1992年から2005年までビッグコミックスピリッツにて連載。

……と思っていたら、2017年から新章の連載が始まっている様子。ただし、そちらはチェックできてませんのでこの記事では2005年までの内容についてのみ書きます。

美術界の裏を知り尽くした男「藤田玲司」と助手「サラ・リファ」が、古今東西の作品をめぐって世界を舞台にする美術漫画。基本1話完結、たまに中長編。死人が出るようなシリアスから日常の心温まるエピソードまで。

美術漫画としての驚異的な幅広さと、斬新な視点。人間ドラマとしても魅力的なキャラクターたちと多様な展開。個人的にものすごく好きな作品。なんだか、そこまで知名度がある感じではないですが名作と呼べる漫画だと思いますよ!




出てくる作品の幅が驚くほど広い!

このギャラリーフェイクの何がすごいって、出てくる美術品の幅がとんでもなく広い!

西洋の有名画家、日本画の名作だけじゃない。ブリキのおもちゃ、古代ギリシャの彫刻、日本刀、腕時計、茶器、宝石、鎧、南米の古いミイラ、地図、能面、東南アジアの陶器、書道、仏像、西洋の陶器、化石……

有名どころに偏ってはいるものの古今東西、多種多様。次から次へと作品が飛び出してくる。まったく飽きない。

これだけの物を調べ上げ描ききってしまう作者さまの知識と労力。もう、驚愕&脱帽。私もブログをやってて色々と情報収集をやってる身ですが、信じられませんね。どれだけの資料が必要なのか。どれだけの努力が必要なのか……

美術業界の裏を描く面白さ

また、単なる作品紹介で終わってないのが物語としての面白さ。本作ギャラリーフェイクでは美術業界の怪しく危険な裏側を中心に描かれています。

そもそも主人公達からして犯罪者。藤田の経営する画廊「ギャラリーフェイク」は、表向きは贋作(=偽物)専門。しかし、実際には世界各地から闇ルートで集めた真作(=本物)を高額でやり取りしている闇の拠点。

フェイク(fake)=贋作のタイトル通り、偽物が大きなテーマの1つ。藤田自体が偽物を作ったりするし、素人をだまそうとする悪徳商人から、プロまで間違う迫真の贋作まで。さらには「本物を贋作だと言って安く買い叩こうとする」というパターンも。

業界の闇、美術品を鑑定する難しさ、偽物の多さ、素人のだまされやすさ。そういった部分を前面に出している。

また、強盗団なども登場。美術品の「美しいもの」という側面だけでなく、「商品・金儲けの道具」であることも描いているのがリアリティ。

このような犯罪行為・闇の住人たちが多数登場することで緊張感と迫力ある話に仕上がっています。

魅力的なキャラクターたち

出てくるキャラクターたちも、みんな実に良い味してるんですよねぇ。

まず、主人公の藤田がとても魅力的。メトロポリタン美術館の元キュレーター(学芸員)。「プロフェッサー(=教授)」とまで呼ばれた実力者で出世街道。単純な知識だけでなく真贋の鑑定力、修復・修理の腕前も超一流。しかし、館内政治に負けて日本に帰国。そこから裏の世界に……

しかし、今でも作品・作者に対する敬意と美を愛する心は忘れてはいない。金まかせの見る目が無い俗物には贋作を売りつけたりするが、逆に作品の良さを知る者には真作でも格安でゆずることも。悪人ではなく、助けてもらった人間には金・物資などのお礼をためらない。

う~ん、かっこいいですなぁ。キャラ造形の分類としてはダークヒーロー的? そして、億単位の金を動かしてるくせにボロボロの古アパート暮らし。体力が無く運動も嫌い。蟹が大好き。こういった庶民的で親近感が持てるところも。

他のサブキャラクターも実にキャラが立っている。私はラモスさんがお気に入り。ラテンアメリカ出身のトレジャーハンター。一攫千金で豪華な暮らしをするよりも、宝探しそのもののスリルと面白さに取り付かれた「宝探し中毒者」。

しかし、困っている相手は何だかんだ助けるお人好し。また離婚していて娘に合わせてもらえない残念な父親という面も。

藤田とは世界中で出会う腐れ縁。良いコンビです。ラモスさんが出てくる話は安定の面白さ。

あとは知念さん、地蔵さんとかもええ存在感してますなぁ。そして三田村さんの絵柄は初期が好き。途中からはちょっと顔が変わってる気がしません?

その1話だけに出てくるキャラクターたちも、ただのモブって感じじゃなくて素晴らしい。しっかり人生が感じられる。ここら辺はベテラン漫画家さんの上手さなんでしょうね。

ヒロイン「サラ」の魅力と、藤田

さて、藤田と並ぶもう1人のメインキャラクターが助手でありヒロインである「サラ・リファ」。

まず、キャラ設定が個性的。中東の王族の家系。しかし、戦争によって両親を殺され日本に流れてきた。両親と共に美術好きで、イスラム教的には不信者。

……よく、この設定が通りましたね(笑) ちょっと大人の事情でうっかりすると面倒そうじゃないですか。定番の日本人とか白人美少女にしておいた置いた方が無難でしょう。まぁ、定番じゃないからこそ個性が出てるんだけども。

性格は子供っぽいけど素直で元気。めちゃくちゃ良い香りがするらしい……! そして、男にモテる。チャーリー、カシム、千手、香本……

藤田も女性にもてるっぽいんだけど、作中の部分を読むだけならサラの方がモテてるんですよね。

そして、その男たちに言い寄られるサラが藤田を選ぶ。それが藤田の「男としての魅力」を間接的に表現しているわけです。いい女に選ばれる、いい男。恩もあるけど、ぞっこん。少し心が揺れたりもするわけど、やっぱり藤田のそばにいる。

この間接的な表現がスマートで良い。いわゆるハーレムなんかは直接的すぎて俗っぽいもの。「女にモテたい!」という欲望がダダ漏れ。

それよりもヒロインの方をモテモテにすることで、そのモテるヒロインが男たちの中から選ぶことで主人公の格を上げる。こちらの方が余裕があり大人っぽい。

美術漫画としても人間ドラマとしても、すばらしい完成度の名作だと思いますよ。







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