web小説「あなたの未来を許さない」について語ります! ~無能力の上手さ~

知恵と工夫で強敵を倒せ! 「無能力」の使い方が上手い! 危険な未来式人権!

というわけで、今回は小説家になろうから「あなたの未来を許さない」について語ります。

~挿絵計画進行中。2018.1.10 第二日:01、03、第// 無料オンライン小説です

根暗な女子高生「御堂小夜子」。彼女はある晩、27世紀の未来人から大学授業の教材として殺し合いの【対戦者】に選ばれてしまう。小夜子の監督者は「キョウカ=クリバヤシ」。

能力が1つだけ与えられるはずだったが、まさかの外れで能力無しに!? 知恵と工夫のバトルアクション。

主人公の小夜子が重度の変態レズであり、また1度だけだが性的暴行シーンが出てくるのがやや読む人を選ぶかも。しかし、作品のクオリティは非常に高いと思いますね。

かなりのネタバレがあるのでご注意ください。




危険な未来式人権

タイムマシンを持つ27世紀の未来人たちが企画したデスゲーム。教育運用学の試験として、人間を上手く操縦する方法の学習と極限状態に置かれた人間の観察を目的とする。ついでにテレビ局協賛のエンタメ番組もあるという外道っぷり。

「過去の人間を殺し合わせるとかタイムパラドックスが起きるんじゃないの?」という話になりますよね。

そこで本作ではコンピューターの計算によって、未来にまったく影響を与えたなかった人間を選んだ、という理論が説明されています。

生物としての血脈は勿論、関与した事柄が僕達の現代まで何も繋がっていないことが、歴史上の事実として明らかになっている。これは学校の天体量子コンピュータで手間をかけて検証し計算したものだから、間違いない。

歴史および時間の流れにおいて完全に無意味な存在。だから、干渉して改変しても問題ないという理屈。う~ん素晴らしい。

また「無意味な存在と言っても、殺し合わせるとか人権上どうなの?」という突っ込みもありますよね。

それに対する回答としては、社会貢献する可能性が0なら人権は与えられない、という説明。

いいかい、【人権】っていうのは、その人間の【将来的な可能性】を担保にした保護なんだ』

(中略)

『だから君達みたいな「存在する意味が無いことが確定している人間」には、【人権】は適用されないんだよ』

なるほどなぁ、一理あるって感じですよね。選ばれた方はたまったもんじゃないけど(笑)

こういった説得力のある独自の理屈がでてくる作品は良いものです。世界観に厚みが増しますよ。特にSFの要素がある作品は、説明・理論の説得力と面白さこそが見せ場だと思いますし。

小夜子の考え方に割と共感

主人公たる小夜子さんは幼なじみの「恵梨香」が大好きすぎる変態レズ。しかし、この部分に隠れているんですが他の部分も割と好きな性格だったりします。

まず、彼女は自分自身を無価値だと思っていて、それゆえに未来人の説明を信用します。

『君は何者にもなれなかったし、何にも繋がらなかった』

この一言が。
小夜子が自分の心を縛り続けていた鎖に証明書を付ける、この言葉が。
何よりも、どんな説得よりも。
小夜子に、キョウカの話を信じさせる力を帯びていた。

私はここの流れ好きですね。周りにどれだけ否定されても、自分の可能性を信じ夢を諦めない。そういう主人公も多いですけど、そこまで自分を信じるのは大変なことでしょう。

「お前は無価値だ!」と言われて「そうだよね!」と同意していく方が私には共感できました。

さらに、小夜子の思考回路は割と大人。両親は離婚、母親に出ていかれ1人で自分を育てている父親に対して

最早、逃げた妻に対する意地だけで娘を育てているのかも知れない。

自分を裏切った女の顔に、年々似てくる娘を育てなければいけない、という父の苦痛を察すると、小夜子は時々申し訳ない気分になってくる。いっそのこと、愛人を作るなり、後妻でも貰って気持ちを切り替えてくれればいいのに、とも思うのだが、そんなに簡単に折り合いを付けられるものでもないらしい。

いや~、冷静な分析と優しい意見。自分を愛していないことを理解しつつも、父親に同情する。大人の態度じゃないですか。

他にも自分を虐めてくる女子グループについて

それに、自分自身は無価値な存在だと認めている小夜子であったが、姫子達がクズだとは思いつつも無価値とまでは思っていなかった。
憎まれっ子なんとやら、という奴だろうか。性格が悪い人間のほうが世渡り上手であることを、小夜子も知らない年齢ではない。
ああいう人間のほうが、世間では強いのだ。

自分よりも、自分を虐めてくるクズ共の方が社会的には価値があることを受け入れ認める。なんて大人!

う~ん、これだけ分析力があって冷静で優しい小夜子さんがなぜ社会的に無価値になってしまたのか……普通に立派だと思うのに。まぁ、最後まで読めばそうじゃないっぽいことも分かりますけど。

無能力を使った展開が上手い!

1つの特殊能力が与えられるはずの対戦者たちの中で、小夜子だけがまさかの能力無し。ここが本作の面白いところであり上手い部分。

まず、作品の中心であるバトル描写。能力者に対して、能力のない常人が知恵と工夫で戦っていく。弱者が強者を倒す、まぁ割とスタンダードな路線では。

もちろん、この部分も高水準ではあります。小夜子のとっさの戦術と諦めない執念は緊張感と迫力満点。

しかし私が上手いと思ったの直接のバトル以外の部分。まず、小夜子は現代人同士で話し合って引き分けのまま企画を終わらせようと考える。平和的で現実的、たぶん私も同じ状況なら同じことを考えます。

そして対戦相手との会話に成功。自分の能力を聞かれても素直に答える。自分は能力無しです、と。それに対する相手の反応は? 「嘘つくなよ!」

そりゃそうですよね~(笑) 能力を隠してるようにしか思えない。この状況で本当に能力が無いなんて信じる方がおかしい。

能力無し、ゆえに相手から信用されない。平和な交渉ができない。殺し合うしかない。無能力だってことが平和な交渉を自然に禁止して殺し合いへと物語を誘導していくわけですよ。リアリティのある展開。小夜子に能力があれば、きっと話の流れは変わったでしょう。

また、能力無しになった原因は監督である未来人キョウカへの嫌がらせであることが途中で発覚します。キョウカも虐めを受けていた、これを知って小夜子は彼女に親近感を持ちます。能力無しの原因を上手く物語に絡めている。

最後に、勝ち残ってしまった小夜子はタイムマシンで現代に来ていた監督者をキョウカと協力して皆殺しにしまう。勝手な理論でデスゲームに参加させやがった復讐ってわけですね。

しかし、そこは対戦フィールドではなく能力は使えない。普通なら復讐なんて不可能。でも、小夜子はもともと無能力で勝ち上がったきた。だからこそ能力なしでも復讐できる。他の誰かが生き残っても結局は未来人の言いなりになるだけ、対戦者たちの中で唯一小夜子だけが未来人たちを殺せる可能性があった。

読んでて「なるほどな~!」と感心しちゃいましたよ。ここにきて無能力が「弱さ」から「強さ」に変換されるカタルシス。調子に乗ってた未来人たちの見逃し。そしてキョウカに嫌がらせした虐めグループの自爆。上手い展開。

このようにバトル以外でも無能力であることが展開に活かされているわけで。無能力の弱さの側面だけを見るのではなく、それを多角的に利用。作者である「Syousa.」さまは上手いですねぇ。

あと話はズレますけど、本作「あなたの未来を許さない」では途中でタイトルが回収されます。タイトルが回収される物語は良作の確率大! これはみなさん経験している法則じゃないですかね?

イラストも素敵!

この作品は挿絵も大きな魅力。作者さま本人ではなく「jimao」という方が描いているとのこと。

これがとっても良い感じ! 白黒ながらキャラクターの雰囲気がかなり上手く表現されています。文章による描写とまったく違和感が無い、まさにぴったり。

イラスト計画が始まった経緯までは知りませんが、初めからではなく完結後に挿絵の提供が始まったようです。jimaoさんが本作を読んで気に入ったのでしょうか、けっこう愛を感じるイラストで本当に良い。

「小説家になろう」の作品を評価する時にイラスト、しかも作者以外のイラストレーター制作、を考慮するというのはやや邪道な気がしないでもない。

でも、コンテンツとしては文章だけよりイラストがあった方が良いに決まってます。すばらしい物語に、すばらしいイラスト。総合評価としては私の読んできたweb小説の中でもトップクラスの完成度です。

この記事を書いているのは2018年3月25日ですが、イラストはさらに追加予定とのことで楽しみですね。

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